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人材、インフラ、自社製品 現場で育て、現場で創る──朝日インテックがケニアで実現する医療のトータルイノベーション
公開日時:
2025/6/19 23:30
本記事では、朝日インテックがケニアで展開する医療事業の全体像を紹介します。現地病院との合弁による心疾患センターの設立をはじめ、医療インフラ整備、人材育成、自社製品の現地実装・開発までを一体的に進める同社の取り組みは、アフリカ市場の可能性を捉えた実践的なモデルです。日本企業が規制や制度の柔軟性を活かしながら、現地に根差した持続可能な事業を築くための示唆に富んだ事例をご紹介します。
朝日インテック株式会社は、1976年に愛知県瀬戸市で創業された医療機器メーカーであり、血管内治療用ガイドワイヤーやカテーテルの分野において世界的なシェアを有する企業です。同社は「品質第一」の経営理念のもと、患者と医療従事者のニーズに応える製品開発に注力しており、日本国内にとどまらず、アメリカ、ヨーロッパ、アジアなど世界中に拠点を展開しています。
朝日インテックの事業は、主に医療部門(ガイドワイヤーやカテーテルの製造・販売)と産業機器部門に分かれています。特に医療部門では、心血管系や脳血管、末梢血管領域で使用される製品群を展開し、世界の医療現場で高く評価されています。また、同社は極細ステンレスワイヤーの開発・加工技術に強みを持ち、他社にはない高度な製品開発を実現しています。
参考URL:

朝日インテックは、世界中の医療現場で評価されている製品力と技術力を背景に、次なる成長市場として医療インフラが未整備な新興国・途上国への貢献を視野に入れてきました。その中でも、医療アクセスの格差が大きく、心血管疾患が深刻化するアフリカ市場への進出は、同社のグローバル戦略の一環として極めて意義ある一手といえます。
そうした背景のもと、朝日インテックは2024年、アフリカ市場における本格的な医療展開として、ケニア西部の都市エルドレットにある現地の私立病院「Eldoret Hospital」と合弁会社「ELDORET HOSPITAL-ASAHI INTECC HEART CENTRE」を設立しました。この合弁会社は、心血管疾患の診断とカテーテル治療を専門とする医療施設であり、同地域における初の本格的な心疾患治療センターとして大きな注目を集めています。
2023年11月に合弁契約が締結され、2024年2月に正式登記が完了。出資比率は朝日インテックが45%、Eldoret Hospitalが55%、資本金は約2,869万ケニアシリング(約2.87億円相当)で設立されました。
この施設は、朝日インテックにとって単なる製品の提供先にとどまらず、同社が自ら関与する医療インフラ構築と人材育成のハブとして位置づけられています。現地医療ニーズに対する具体的な解決策を提示し、地域社会に持続的な価値をもたらすことを目指した先進的な取り組みです。
参考URL:

朝日インテックのアフリカ事業は、単なる製品輸出ではなく、現地医療機関との合弁による医療施設運営へと進化してきました。その背景には、ケニアにおける医療課題と、同社が培ってきた高度医療技術・人材ネットワークを融合させた戦略的な判断があります。
この流れは2023年10月31日、ケニア西部のエルドレット市に位置する私立病院ELDORET HOSPITAL LTD(1975年設立)との合弁契約締結によって具体化し、2024年2月には正式登記された「ELDORET HOSPITAL-ASAHI INTECC HEART CENTRE」の設立へと結実しました。出資比率は朝日インテック45%、Eldoret Hospital 55%、資本金は約2.87億円という体制でスタートしています。
この合弁設立の実現には、JETRO(日本貿易振興機構)ナイロビ事務所の支援が大きく寄与しました。朝日インテックは、アフリカ進出を検討する初期段階から、JETROの提供する「現地市場の動向調査」や「規制環境の情報提供」、「進出国リスクの可視化」などを活用しており、それが現地パートナー選定の精度や交渉の円滑化に直結しました。
特に、JETROが実施する現地医療関係者や行政関係者とのマッチング機会は、Eldoret Hospitalとの関係構築に大きく貢献しました。さらに、現地法人設立に必要な会社法や税制に関するガイドラインの提供、定款作成や登記申請に関する実務的アドバイスなど、法務・会計・制度面における包括的な支援が行われ、朝日インテックのケニア進出を下支えしました。
また、施設開設後の現地広報活動や医療人材ネットワークの拡張に関しても、JETROのプログラムを通じて政府関係者・大学・医療団体との接点が得られ、事業の信頼性・認知度を高める効果を発揮しました。
加えて、経済産業省が推進するアフリカ健康構想(Africa Health and Wellbeing Initiative)や、アフリカビジネス協議会などの官民連携プラットフォームにも朝日インテックは積極的に参画しています。これにより、現地政府との政策対話の場への参加が可能となり、制度改革や現地ニーズの把握に関してタイムリーな情報が得られる体制を築いています。
同構想では、日本企業の医療・ヘルスケア技術をアフリカ各国の課題解決に結びつけることが重視されており、朝日インテックの現地事業もその成功事例として注目されています。こうした政府系支援枠組みとの連携により、朝日インテックは単なるビジネス展開にとどまらず、政策的整合性のある社会貢献型事業としての位置づけを確立しつつあります。
このように、同社のアフリカ事業は、初期の市場分析から着実にステップを踏みながら、現地医療ニーズとの接点を明確にし、組織的支援を得て発展してきた沿革を持ちます。
参考URL:
https://www.asahi-intecc.co.jp/news/20231031_01.html
https://abp.co.jp/contents/insights/japanese2403/

「ELDORET HOSPITAL‑ASAHI INTECC HEART CENTRE」は、ただの高度医療施設ではありません。日本のKOL(Key Opinion Leader)ネットワークを通じて招聘された専門医師が、エルドレット地域の看護師や医師、技師を対象に現場でのハンズオン研修を行う教育拠点でもあります。
研修内容は以下のように構成されています:
高度カテーテル手技(CTOなど):慢性完全閉塞の治療をはじめ、西アフリカでは最先端とされる手技を日本人医師が同行し、実地研修を通じて教え込みます。
救急・緊急対応の手順教育:カテラリー室(Cath Lab)における緊急時のプロセスやチーム連携体制の確立を重点的に指導。
診療器具・機器の取り扱いとメンテナンス教育:医療機器の操作方法やメンテナンス手順、および現地独自のトラブルシューティング対応の知識共有。
スマート医療教育:将来的な遠隔診療、ロボット支援などのスマート治療を視野に入れ、先端技術の理解と運用基盤の準備を進めています。
これらの現地教育プログラムは、以下の点で画期的です:
“教えたら終わり”ではなく“育てる医療” にシフトし、現地医師が自律的に最新のカテーテル治療を継続できる体制を整備。
院外にも影響を波及させるべく、Cath Labでの研修成果を近隣病院や診療機関に広める教育活動も計画中。
日本と同水準の研修環境を提供することで、現地の医療従事者が学びやすい環境整備を重視。
このように、朝日インテックは「現地医療水準の向上」と「人材育成の持続性」を重ねて実現し、単なる技術移転ではない “共に成長するパートナーシップ” を築いています。
さらに、朝日インテックはこのセンターを単なる治療拠点にとどめず、現地医療従事者への教育・研修の場としても活用しています。日本から心臓治療におけるKOL(Key Opinion Leader)医師を招聘し、現地医師との共同手術やトレーニングを通じて技術移転を行っており、ケニア国内の医療水準全体の底上げを目指しています。
参考URL:
https://www.africabusinesspartners.com/entry/asahiintecc-eldoret-heartcentre-kenya.html
https://www.asahi-intecc.co.jp/news/20240208_heartcentre.html

朝日インテックのアフリカ展開における最大の強みは、世界トップクラスの技術力に裏付けられた製品と、それを運用・指導できる高度な医療人材とのネットワークです。現地病院との合弁という形を採ることで、地場に根ざした持続的な事業運営が可能となっており、これは一過性の技術導入とは一線を画す取り組みです。
さらに、同社はケニアにおける医療機器規制が日本よりも緩やかである点を活かし、次世代医療技術の実証と導入を積極的に進めています。具体的には、ロボット支援によるカテーテル治療や、AIを活用した画像診断支援、遠隔モニタリング・手術支援通信(5G・衛星通信)といったスマート医療の導入が視野に入れられており、制度的な柔軟性がそれらの展開を後押ししています。
また、現地では医師による新技術の臨床使用や、ハンズオンによる教育プログラムの実施が比較的自由に行える環境にあり、日本のKOL(Key Opinion Leader)医師による実地研修も円滑に実施されています。これにより、教育効果と市場定着を同時に達成する持続可能な体制が構築されています。
さらに、認可プロセスや市場反応の迅速さを活かし、同社は現地での製品テストや改良のフィードバックを得ながら、消耗品を含む供給モデルの適正化も図っています。さらに注目すべきは、同事業が単なるCSR的取り組みではなく、中長期的な収益基盤の構築を見据えたビジネスモデルとして設計されている点です。2024年時点では、同社から具体的な収益数値の開示はありませんが、合弁による安定的な運営体制と製品供給による収益が徐々に発生していると見られます。朝日インテックはこの拠点を通じて、将来的にはケニア国内での消耗品や関連製品の継続的需要を創出し、地域展開とともに黒字化を図る意向と考えられます。
また、同社は医療機器の単なる提供にとどまらず、「教育」を通じた現地力の育成に重点を置いている点も注目されます。これにより、現地の自律的な医療体制の構築が促され、長期的なパートナーシップの形成にもつながっています。
加えて、ケニアという比較的IT・通信インフラが発達した環境を活かし、今後は遠隔診療やロボット支援治療などの次世代技術の導入も視野に入れている点も同社のビジョンの先進性を示しています。
参考URL:

朝日インテックは、ケニアでの実績をもとに、他の東アフリカ諸国への展開も視野に入れています。特に心血管疾患の罹患率が高まる都市部を中心に、同様のモデルを横展開していく可能性が高いと見られます。
また、遠隔医療・スマート治療の領域では、5Gや衛星通信などを活用した診療支援システムの導入を目指しており、地理的ハードルの高い地域においても質の高い医療を届ける構想が進んでいます。特に、ケニア国内ではインフラ整備が進みつつあることを背景に、都市部の中核病院と地方の小規模診療所を結ぶ「遠隔画像診断ネットワーク」や、手術支援AIによる術中ナビゲーションなどの実証実験が検討されています。これにより、現地に熟練専門医がいない地域でも、都市部のKOLや日本側の医師と連携して的確な診断・処置が可能となる環境の整備が期待されています。また、SpaceX社が提供するStarlink(スターリンク)のような衛星インターネット回線の活用も視野に入れており、通信インフラの弱い農村部においても安定的な医療連携が実現できる可能性が広がっています。これにより、アフリカの医療格差是正にも貢献できると期待されています。
同時に、現地の医療従事者との協働をさらに深化させるために、大学や政府系研究機関との連携も模索されており、教育機関との協力による人材育成事業も今後の柱になると見られます。
参考URL:

朝日インテックは、日本発の高度医療技術と現地の課題を的確に結びつける形で、アフリカ・ケニアにおける医療事業を推進しています。ガイドワイヤーやカテーテルに代表される世界最高水準の製品力に加え、現地医療機関との合弁による病院運営、そして現地医療従事者の教育・育成にまで踏み込んだ戦略は、単なる医療機器輸出の枠を超えた“共創型医療支援モデル”として非常にユニークなものです。
また、JETROや経産省による支援制度の活用、アフリカ健康構想との連携により、官民パートナーシップの好例としても位置付けられます。今後はケニアを拠点に東アフリカ各国への展開も視野に入れており、遠隔診療やAI、衛星通信といったスマート医療の導入を含めた先進的な医療ネットワークの構築も進められています。
このような朝日インテックの取り組みは、社会課題の解決と事業性を両立する持続可能なビジネスモデルとして、今後アフリカ進出を検討する日本企業にとって非常に有益なケーススタディとなるでしょう。
本記事に関するご質問や、アフリカでの医療事業展開にご興味のある方は、以下よりお気軽にお問い合わせください。
AA Health Dynamics株式会社
Email:info@aa-healthdynamics.com
Web:https://aa-healthdynamics.com
皆様からのお問い合わせを心よりお待ちしております。
この記事を書いたライター
原健太
東京農業大学大学院修士課程を卒業後、同大学にて助手として勤務。2014年にJICA青年海外協力隊として野菜を通じたヘルスプロモーションを行うため、サモア独立国に赴任。帰国後、立命館大学にて大学リサーチアドミニストレーター(URA)として、センターオブイノベーション(COI)ポストアワード業務、知的財産管理、新規事業開発、プロジェクトマネジメントに従事したのち、予防医療マーケティングを行う株式会社キャンサースキャンの子会社である株式会社AfricaScanのゼネラルマネージャーとしてケニア・東アフリカの医療課題解決や健康増進の事業に従事。2022年、AA Health Dynamics株式会社を設立。その後株式会社キャンサースキャンより事業譲渡を受け、代表取締役として現地の医療教育、医療クリニック、医療ファイナンスのサービスを提供する。
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