AA Health Dynamics Original Contens
blog /
日本企業も注目するアフリカ医療スタートアップや、市場背景に迫る!
公開日時:
2024/1/9 13:57

現在、世界中でアフリカ市場への注目が高まっています。パンデミック以降も、アフリカ諸国は急速に成長しており、特に医療セクターにおいては、深刻な課題と多くのビジネスチャンスが共存している状況です。今回は、日本企業も注目するアフリカの医療スタートアップ2社の紹介に加え、アフリカの医療市場を開拓するメリットや医療市場の現状や背景などをお伝えします。
日本企業はTICAD(※1)前後でもさまざまな分野でアフリカ諸国へ技術協力や支援を行っています。まずは邦人企業からの出資を受けたり覚書締結によるビジネス検討を行っているアフリカの医療スタートアップをほんの一部ですがご紹介します。
Helium Healthはナイジェリア発のヘルステックスタートアップで、5月5日に、シリーズAで約1000万ドルの投資を確保しました。アフリカの医療プラットフォームであり、従来の医療カルテなどの紙ベースのシステムをデジタル化し、医療サービスを効率化させています。日本の投資会社(AAIC ※2)も支援しています。
参考記事: https://note.com/harakenken22/n/n441d07ee3bb4
この会社の設立は2016年に紙ベースの患者記録に代わるデジタル・システムを病院向けに提供することから始まりました。
その後、Helium Health社は他のアフリカ諸国に拡大し、遠隔診察のための遠隔医療プラットフォーム、医療請求および診療管理システム、医療記録にアクセスし医療提供者とオンラインでコミュニケーションするための患者ポータルなど、さまざまなサービスを追加することにより、その事業を拡大させてきました。
また2020年、AAICはナイジェリアを拠点とするHelium Health社に対し、1,000万ドルの資金調達ラウンドを共同で実施しました。それにより、2021年にはUAEとカタールで事業を展開する医師予約プラットフォーム、Meddy(※3)も買収しました。
この買収により、Meddyの予約管理機能とHelium Healthの臨床ソリューションが統合され、医療データの相互運用性や患者とのインタラクションがさらに向上したと報告されています。
※1:TICAD(アフリカ開発会議、Tokyo International Conference on African Development)は、アフリカの開発をテーマとする国際会議です。1993年から日本政府が主導し、国連、国連開発計画、アフリカ連合委員会、世界銀行と共同で開催しており、アフリカ諸国のみならず、開発に携わる国際機関、民間企業、市民社会も参加するオープンなフォーラムとして構成されています。
※2:AAIC(Asia Africa Investment and Consulting)は、アフリカやアジアに焦点を当てた投資会社で、特にアフリカの医療市場に強い関心を持っています。CEOである椿進氏の指導の下、AAICはアフリカの成長する医療分野に特化したファンドを設立し、日本企業の海外進出を支援しています。
※3:Meddyは、2015年にカタールで設立されたオンライン医師予約プラットフォームで、患者が最適な医師を検索し、簡単に予約できるサービスを提供しています。
参照URL:https://www.jica.go.jp/TICAD/ticad/whats/index.html
参照URL:Corporate NTU
参照URL:Afrikan Heroes
参照URL:The Peninsula Newspaper
参照URL:Healthcare Business Club
Revital Healthcare社(本社:ケニア共和国モンバサ、読み:リバイタルヘルスケア)は、ケニアに拠点を置く大手医療用品メーカーであり、その主力製品の一つが自動無効注射器(auto-disable syringe)です。
2024年1月にに株式会社商船三井(本社:東京都港区、以下「商船三井」)は、グループ会社の商船三井ロジスティクス株式会社(本社:東京都千代田区、以下「MLG」)と共同で、Revital Healthcare社と、ケニア・モンバサ経済特区での医療用品・医薬品の物流センター建設に向けた戦略的提携についての覚書を締結しました。
Revital Healthcare社の注射器は、世界保健機関によりサブサハラアフリカで初めて認定された自動無効注射器であり、一度使用すると再び使えない設計になっており、医療現場での病原体の拡散を防ぐ目的で開発されました。
そのため、HIVやB型肝炎のような注射器を使いまわすことにより感染症が広がるような感染症の伝播リスクを低減させるために重要な役割を果たしています。
また、従来の伝染病だけでなく、COVID-19ワクチン接種プログラムや新たなマラリアワクチンの展開などに伴う需要の高まりを受け、広く活用されています。
さらに、同社では診断キットやラボ消耗品など、他の医療製品の製造にも取り組んでおり、アフリカ全体での医療インフラ改善に貢献しています。
しかし、現在 サブサハラアフリカには医療用品の組立てや医薬品の保管に適した設備を有する物流センターがないため、多くはアフリカ外で組立て・保管されてからアフリカへ配送されています。また、ケニアで製造した医療用品の一部は一度海外の倉庫へ輸出され、アフリカの需要地へは海外倉庫から配送が行われています。
MLG社との覚書によって、商船三井グループの世界的なネットワークと海運・インフラ・ヘルスケア物流のノウハウや知識と、Revitalの医療用品・医薬品の専門知識、国際機関とのネットワークを融合させ、アフリカのヘルスケア物流課題の解決、医療水準の向上に貢献することを目指しています。
具体的には、ケニア・モンバサのドンゴクンドゥ経済特区での物流センターの建設により、Revitalの製造する医療用品とアフリカ外で製造された製品をモンバサの物流センターに集積し、そこから医療用品・医薬品のニーズが大きいアフリカ地域へ、輸送コスト・輸送時間を削減した上で効率的に配送することを検討しています。
※参照URL:https://www.mol.co.jp/pr/2024/24007.html
※参照URL:Revital Healthcare
※参照URL:How we made it in Africa
※参照URL:The Peninsula Newspaper
※参照URL:Corporate NTU
マスメディアにはあまり報道されませんが、現在多くの日本企業がアフリカの医療市場に参入しています。ここではなぜアフリカ諸国をターゲットにするようになったのか、その背景を探っていきます。

みなさんもご存じのように、日本国内では少子高齢化が進行しており、2024年4月1日現在のこどもの数は(15歳未満人口)、前年に比べ 33万人少ない1401万人であり、これは1982年から43年連続での減少の中でも過去最少となりました。
この人口減少により、将来的な日本の市場が縮小の一途をたどるであろうことが考えられます。このため、成長が見込まれる海外市場、特にアフリカ市場への進出が日本の将来を握るカギとなっています。
また、アフリカは新興市場であり、特に医療分野ではまだまだ課題が山積みであると同時にその潜在力が高いため、多くの日本企業が進出を模索している状況です。
※参照URL:chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.stat.go.jp/data/jinsui/topics/pdf/topics137.pdf
※参照URL:https://www.jetro.go.jp/en/news/releases/2020/21ebe9c3d8ed499d.html
アフリカ諸国は、パンデミック以降も世界で最も急速に人口が増加している地域の一つです。それだけでなく、医療分野におけるニーズが急増しています。
2022年の世界保健機関(WHO)の調査によると、アフリカの医療制度は他地域に比べて遅れているという報告がされてます。アフリカ大陸には世界人口の14.4%が住んでいますが、世界の医療費の1%しか占めていないのが現状です。
また、人口1万人当たりの入院病床数は、東アジア・太平洋地域の45床に対し、アフリカはわずか10床と推定されているとともに、アフリカの医師数は人口1万人当たりわずか2.9人であり、これは医療の「頭脳流出」の影響も無視できないですが、東南アジアの7.7人、世界の16.4人とは比べ物にならないくらい低い値となっています。
このような結果から、日本企業はこの成長市場をビジネスの拡大機会として注目しています。日本に比べればまだまだ医療技術や医療サービスの行き届かない地域があるからこそ、参入の余地があると考えられます。

多くのアフリカ諸国では、医療インフラが未整備であり、先進的な医療機器やデジタル医療技術の需要が高いです。日本企業は、これまで国内市場で培かった医療技術を活用し、アフリカ市場での不足を補うことで市場シェアを拡大しようとしています。
日本の企業の中には、その課題にいち早く目を付け取り組んでいる会社もあります。例えば、AA Health Dynamics社では、現在ウェビナーの開催やケニア政府公認のもとで医療教育プラットフォーム「MedicScan(※1)」を通じ、ケニアの現地医師へ医療知識やCTなどの医療スキル向上を支援し、現地の医療環境を改善し、質の高い医療提供に尽力しています。
また、日本は世界でも医療保険制度が整っていることで知られている先進国ですが、その医療保険制度をまねて取り入れようとしているアフリカの国々も増えています。
How we made it in Africaの資料によると、アフリカのいくつかの国では、保険会社の収入保険料(総収入保険料、GWP)がGDPを上回るペースで成長していることが分かっています。
例えば、2020年のガーナのGWPは13%増加ですがGDP成長率はわずか0.4%でした。ザンビア、ジンバブエ、モザンビークなどの他の国々も、同年のGDPが減少しているにもかかわらず、保険料の伸び率は2桁にも及びました。
これを受け、マッキンゼー・アンド・カンパニーの調査では、2020年から2025年にかけての保険市場全体の年平均成長率は7%にも及び、ラテンアメリカに次いで2番目に高くなると予測されています。
このように医療分野では、アフリカ諸国におけるインフラの不足と質の高い医療サービスへの需要の高まりが、日本企業の参入動機となっています。
※1:「MedicScan」は、アフリカの医療従事者に対してオンラインおよびオフラインで医療教育を提供するプラットフォーム
※参照URL:https://aa-healthdynamics.com/
※参照URL:How we made it in Africa

日本企業がアフリカに進出する理由の一つに、国際社会への貢献が挙げられます。特にSDGsの目標である「すべての人に健康と福祉を」に対して、アフリカの医療インフラを改善することは重要な役割を果たします。
日本企業は、このような貢献を通じて、企業の国際的な評価を高めることができると考えています。また、日本政府の支援とTICADの役割との関連も見逃すことができません。
日本政府はTICAD(アフリカ開発会議 ※2)を通じて、日本企業のアフリカ進出を後押ししています。特にアフリカ市場での医療サービス改善は、日本とアフリカの両方にとって利益となるものであり、両国の関係強化にもつながると言われています。
その結果を裏付けるように、2019年8月に閉幕した第7回アフリカ開発会議(TICAD7)を受け、ジェトロが同年9月と10月にアフリカの日系関連企業423社を対象に実施した調査では、日本企業の6割以上が「グローバル戦略におけるアフリカの重要性が高まる」と回答したという報告がありました。
その調査の中で、進出理由としては、8割の企業が 「今後の市場性 」と回答しています。そのほか、デジタル経済への移行など新しいトレンドへの関心も高く、ケニアが5年連続で有望国と評価されていることが分かっています。
※2:Tokyo International Conference on African Development (アフリカ開発会議)の略称。アフリカと国際社会の広範な関係者がアフリカ開発の現状と課題を話し合い、開発の重点分野に対する合意を形成するためのプロセスで、日本政府、UNDP、世界銀行、国連アフリカ特別顧問室、アフリカ連合委員会が共催しています。
※参照URL:JETRO

現在、日本の医療システムは、電子カルテや遠隔医療システムを導入することで、効率的な医療サービスの提供を目指しています。これに対し、近年のアフリカ諸国において、デジタル化の遅れが医療サービスの質を低下させていることは、他の欧米諸国と比べても明白です。そのためアフリカでは、医療インフラの不足から質の高い医療サービスへの需要が非常に高まっています。
日本企業は、その信頼性の高い医療機器や技術を活かし、これらのニーズに応えることができるため、アフリカ諸国への参入に期待が持てます。既にケニアの医療市場では、日本の企業が提供した、自動無効注射器やデジタル医療システムなどが導入され、感染症の防止や診断精度の向上に寄与しています。
※参照URL:グローバル人材育成研修 |AA Health Dynamics株式会社 グローバルサウスにおける事業開発支援集団
※参照URL:Japanese investor doubles down on the African healthcare market | NTU-SBF Centre for African Studies (CAS) | NTU Singapore
多くの日本企業がアフリカ諸国へ目を向けていますが、アフリカ諸国での事業を成功させることは難しいと言われているのも事実です。ここでは、なぜ日本企業がアフリカ諸国への参入が困難なのかそのリスクをお伝えします。

まず初めに規制や政府の政策の変動が参入困難な理由のトップに挙がるでしょう。アフリカ諸国では、頻繁に変わる規制や政府の政策が企業の事業展開を著しく難しくしています。
特に、税務や許可申請に関する手続きが複雑であり、現地の法律や規制の急な変更が日本の企業の運営に悪い影響を与えることがあります。
また、軌道に乗りだし利益を多く出すといきなり政府が日本企業を締め出す法律や規則を作りだし、その事業を乗っ取ってしまう可能性もあります。
それ以外にも、政治的・社会的な不安定性が新興市場では大きな懸念材料です。日本企業は、このような不確実性を避ける傾向があり、政情不安や治安の問題が投資拡大を阻害しいます。
※参照URL:African Business
※参照URL:Business Insider Africa

アフリカの多くの地域では、電力供給や交通インフラが未発達であり、事業運営に必要な基礎的な設備が不足しています。
この電力不足や輸送インフラの問題は、患者さんに使用する医療用品や医療電子機器、または医療サービスの供給に大きな影響を与え、生産効率を低下させてしまいます。
また、アフリカでは、資金調達が他の地域に比べて難しい場合が多く、銀行の高い金利や信用の問題が企業の成長を妨げています。これにより、企業が必要な資金を確保するのが難しくなり、ビジネス拡大の妨げとなっているのが現状です。
さらに、資金やインフラ資材を確保しても次に待ち構えているのが労働力のスキル不足です。アフリカでは、若年層が多いにもかかわらず、熟練した労働力の不足が問題となっています。
これは教育システムや職業訓練の不足によるものであり、企業が現地で事業を拡大する際の人材確保が課題となっています。そのため、本格的に事業を始める前にはその人材確保や人材教育に時間やお金を費やさなくてはいけません。
※参照URL:Business Insider Africa
※参照URL:African Business
アフリカ諸国に注目しているのは日本企業だけではありません。アフリカ市場には、欧州や中国など他国の企業も積極的に進出しており、日本企業は多くの外国企業とその利権を得るために戦わなくてはいけません。
また、中国など特定の国は、日本がアフリカ諸国に注目する前からインフラ事業に参入しています。そのため、1つの国が独占している市場などもあり、今から参入することが難しいというリスクも挙げられています。
上記のようなリスクはありますが、日本は何十年も前から医療レベルは先進国でもトップレベルであり、日本企業は信頼性の高い製品と技術力を強みに、独自のポジションを築くことができると考えられるため、今からでもまだまだ参入できる余地はあると考えられています。
※参照URL:JETRO

アフリカ諸国は現在急速に成長している地域であり、人口増加に伴い、医療需要が急速に拡大します。そのため、デジタルヘルスケアや診断技術の進展が求められており、多くの日本企業は、これをビジネス拡大のチャンスと見なしています。人口減少などにより、国内市場が縮小している日本にとって、成長が見込まれる海外市場、特にアフリカ市場は魅力的です。人口増加と経済成長が続くアフリカに進出することで、日本企業の長期的な成長が期待できるからです。
元々、日本は高度な医療機器や医療技術を持ち合わせているため、それをアフリカ市場に提供することで、現地の医療環境の改善に役立てることができるでしょう。
現に、日本企業主体による自動無効注射器や診断キットなどの技術はアフリカで成功し、事業範囲を徐々に拡大しています。
また、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた国際的な貢献も、日本企業がアフリカ医療市場に注目する理由の一つです。アフリカでの医療インフラの改善は、SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」にもつながります。
アフリカの医療市場における日本企業の進出は、単なるビジネスチャンスの追求にとどまらず、国際的な社会貢献や日本の国際的な地位向上にも寄与します。アフリカ市場の成長と医療ニーズの拡大を背景に、日本企業は今後も積極的にこの市場を開拓していくことが望ましいです。
この記事に関するお問い合わせや、アフリカビジネスに関するご相談は、以下の「Form」(AA Health Dynamics株式会社のお問合せフォームへ移動します)、または、Email [info@aa-healthdynamics.com]までお気軽にどうぞ!
この記事を書いたライター
増田さなえ
米国ピッツバーグ州立大学卒業後、セントマシュー医科大学とウィンザー医科大学に進み医学博士取得、救急医師として、米国やカリブ海の医療に従事する。2014年に出産のため休職し、ウェブライターを始める。2014年からカリブ海の救急医として2019年まで働く。2020年からは米国に戻りウェブライター専門で活動中。
関連記事
2024/12/27 14:03
アフリカの現地課題に応える、ドクタージャパン株式会社の高品質医療針とトータル技術支援
ドクタージャパン株式会社は、日本の精密医療機器技術を礎に、アフリカの医療課題解決に本格的に挑戦しています。麻酔針・生検針などの高品質医療機器を現地ニーズに合わせて改良・提供するだけでなく、医療従事者への技術研修や物流体制の整備にも力を注いでいます。単なる製品供給を超え、持続可能な医療体制構築を目指す...
2025/10/2 23:30
2024/7/10 14:20
アフリカ母子の命を守る——African Mothers株式会社の挑戦とデジタル保健サービスの最前線
アフリカでは現在でも妊産婦や新生児の死亡率が高く、医療アクセスや情報共有が深刻な課題となっています。African Mothers株式会社は、妊婦の健康記録をデジタルで一元化するパーソナル・ヘルス・レコード(PHR)アプリを開発し、命を守る情報ネットワークを構築しています。この記事では、アフリカの母...
2025/9/25 23:30
2024/12/27 14:03
ツインバードの先端冷却技術で拓くアフリカ医療インフラ革新
日本の家電メーカー・ツインバードは、独自の冷却技術を武器に、ワクチン輸送や医療インフラの課題解決を目指してアフリカでの事業展開を拡大しています。TICAD9公式イベントにも登壇した同社の挑戦は、日本の中小企業が社会課題と新興巨大市場の双方に応える“国際展開モデル”として大きな注目を集めています。本編...
2025/9/18 23:30
2024/12/27 14:03
Africa Health ExCon 2025 開催まとめ
2025年6月、エジプト・カイロで開催されたアフリカ最大級の医療展示会「Africa Health ExCon 2025」には、医療・ヘルスケア分野の最新技術や製品が世界中から集結しました。中でも、日本企業の出展が大きな注目を集め、現地の課題に即したソリューション提案が高く評価されました。本記事では...
2025/9/11 23:30