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日本企業にとって、アフリカは「チャンス」しかない。必要なのは社会貢献ではなく、「マーケティング」
公開日時:
2024/1/9 14:07

日本企業はアフリカの市場を小さいと思っている。今まで新興国だと思っていた国が虎視眈々とアフリカ市場を狙っている。課題起点のアフリカスタートアップから日本企業がリバースイノベーションとして学べることも多い。日本企業のネクストアクションは、アフリカ市場の解像度を上げるためのリアルインサイトを得ることだ。
アフリカはもはや支援する対象ではない。日本企業が製品・サービスを売り込むブルーオーシャン市場だ。むしろ日本企業がアフリカからリバースイノベーションとして学べることも多い。日本企業のネクストアクションは、アフリカ市場の解像度を上げるためのリアルインサイトを得ることだ。

アフリカ・ケニアの医療には、さまざまな課題がある。
医師の数が伸びていない:人口1,000人あたりの医師の数が0.14人から0.2人にしか伸びていない(2000年→2015年)
専門医の占める割合が少ない:ケニアにおける医師は6,400人弱。専門医の割合が約2,500人(約40%)と少ない。内訳は、産婦人科、外科、小児科⋯⋯の順に大きい。
医師が都市部に集中している:約5,120人(約80%)の医師が都市部に集中している。特に、半数以上が首都であるナイロビにいる。
専門性の高い病院の数が少ない:ケニアはレベル1〜6に病院をランク付けしている。最も専門性の高いレベル6の病院は国内に6つしか存在しない。
患者の金銭的負担が多い:UHC(Universal Health Coverage)という国民皆保険制度があるが、人口の3割しか加入していない。さらに、入院患者のみにしか適用されない。
診察に時間がかかり手遅れになることも:平均7回病院を紹介される。理由は、適切な医療機器と医師教育の不足と考えられる。
このようにアフリカの医療には問題が山積している。
その中でも医療・検査機器の不足は深刻だと原健太氏は指摘する。

「もし人が倒れたときに、僕らができることって服を緩めたり、脈を測ったりぐらいですよね。実は、お医者さんも同じです。医療・検査機器がないと診断することができません。症状の目視と触診しかありません。ひとまず風邪のような症状だから風邪の薬を出す。でも、身体の中で起こっていることが見えないから別の病院を紹介する。 例えば、医師が超音波診断機の使い方を知っていたとしても、自分が勤めている病院に機器がなければ、やれることは限定されます」
日常的に医療・検査機器が不足している中、市場シェアを握っているのは外国メーカーの製品が多く、その中でも中国メーカーの製品が台頭してきているという。そこに日本メーカーの姿は少ない。
「超音波診断機の市場シェアを見ると、フィリップス(オランダ)とGE(アメリカ合衆国)、SonoScape(中国)の3社の製品がほとんどです。日本の製品は全く食い込んでいません。
その理由は明らかで、製品の販売を現地の代理店に任せっきりにしているからです。代理店は売れ筋の製品を販売するので、日本の製品をプッシュしない。これに対して、フィリップスやGE、SonoScapeは現地法人を設立して、自社でマーケティングをしています。
日本企業はリスクを取りたくないから、現地法人を設けずにマーケティングを他人任せにしています。これでは市場シェアを獲得できなくても仕方がありません」
日本人はアフリカが開発途上国であるという意識が強く、支援の対象と見なしていることが多い。しかしアフリカにも製品・サービスの需要はあり、購買力がある組織や人々も多数存在する。つまるところ、アフリカはブルーオーシャン市場なのだ。

「日本企業が本気を出せばシェアを獲得できる市場だと思うんですよアフリカは。大企業も初期は小さなモノを売って実績にして、それをまた売ってを繰り返しながら成長してきました。アフリカはもう一度、そういうことをする市場だと思います。例えば、超音波診断機が病院で1個売れました。それを実績にして別の病院でまた売って⋯⋯というのをやっていく市場。
現時点における収益が大きくなかったとしても、市場シェアのうち60〜70%を占めるって決して非現実的な話ではないんですよ。日本企業は技術力が高く、製品の品質はいいです。
例えば、テルモの注射針やオリンパスの内視鏡、富士フィルムの超音波診断機など。どれをとってもクオリティが高くて、10年前の機器であってもアフリカでは十分な価格で売れると思います。例えば、日本だと1万円でしか売れない機器もアフリカなら10万円の値がつくかもしれません。アフリカ市場は日本企業にとって、ビジネスチャンスが十分にある市場なんです」
日本企業の製品が市場シェアを大きくとれるポテンシャルがアフリカ市場にある一方、アフリカで成功している企業の事例から学ぶ必要もある。
ここでは、アフリカのリバースイノベーション(※)の事例を紹介する。
※規制があまりできていない新興国や途上国に企業の拠点を持ちそこで展開(開発)した事業や商品、サービスを先進国に輸入すること
<事例:ジップライン>

2014年に創業したジップラインは、2016年からアフリカのルワンダで固定翼ドローンによる輸血用血液製剤の輸送を行っている。日本に比べて交通網が未発達な同国において、従来2時間かかっていた輸送時間を15分程度に短縮するという成果を出しており、現在ルワンダで2つ、ガーナに6つの配送拠点を擁し、すでに累積35万回超の配送実績を誇る。
2021年から、母国アメリカでもウォルマートと提携し商品の配送を始めたほか、2022年6月からはナイジェリアでも配送事業をスタートし、ケニア、コートジボワールでも拠点を開設予定だ。輸送品は、血液製剤のほか、医薬品、医療用資材、新型コロナウイルスの検体、ワクチンなどである。
日本では、大手総合商社の豊田通商がジップラインに2018年に出資。2021年には、戦略業務提携を締結。同年4月に100%関連会社として「そらいいな」を設立し、日本におけるドローン物流の市場調査と検討を開始した。
そらいいなは、ジップラインからドローンの機体と技術の供与を受けて、ドローンサービスを実施する会社だ。ジップライン社としては、米国以外で機体や技術を供与する初めての例となっている。
2022年4月21日にジップライン製の固定翼ドローンの発着拠点が五島市福江島の福江港に竣工。同日に竣工式を行うとともに、5月末からは奈留島に向けて医療用医薬品の配送飛行を開始した。
「途上国の課題を一生懸命解決しようと思っていたら、実際にこんな課題が解決できたというリバースイノベーションの事例です。豊田通商は、車を主軸としつつも医療機器にも張っていて、日本でも展開するチャレンジ精神が素晴らしいと思います。他の日本企業でも同社と同じようなことができるのではないでしょうか」
ジップラインのように、アフリカでもイノベーションが多く生まれている。いつまでも開発途上国だと見なしていると、日本企業はビジネスチャンスを失ってしまう。
アフリカはJICA青年海外協力隊の人々がボランティアをする地域という意識は、すでに過去のものである。日本人はもっとアフリカ市場に対する解像度を高めなくてはならないだろう。
アフリカ市場には、大きなポテンシャルがある。日本の事業者は、アフリカにもっと目を向けるべきだろう。アフリカに進出するときには、きちんとマーケティング戦略を考えることが非常に重要である。製品やサービスの販売を現地の代理店に任せっきりにすることは、避けなければならない。
日本企業がまずすべきは、アフリカ市場の解像度を高めるために、現地での「リアルインサイト」を得ることだ。自社で現地に赴いてヒアリングを行うのもいいが、現地のメディカルKOL(Key Opinion Leader)とのコネクションが豊富なAA Health Dynamicsを活用することで、コストパフォーマンスを最適化することができる。

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Email info@aa-healthdynamics.com
この記事を書いたライター
原健太
東京農業大学大学院修士課程を卒業後、同大学にて助手として勤務。2014年にJICA青年海外協力隊として野菜を通じたヘルスプロモーションを行うため、サモア独立国に赴任。帰国後、立命館大学にて大学リサーチアドミニストレーター(URA)として、センターオブイノベーション(COI)ポストアワード業務、知的財産管理、新規事業開発、プロジェクトマネジメントに従事したのち、予防医療マーケティングを行う株式会社キャンサースキャンの子会社である株式会社AfricaScanのゼネラルマネージャーとしてケニア・東アフリカの医療課題解決や健康増進の事業に従事。2022年、AA Health Dynamics株式会社を設立。その後株式会社キャンサースキャンより事業譲渡を受け、代表取締役として現地の医療教育、医療クリニック、医療ファイナンスのサービスを提供する。
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