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スマホ1台で何でもできる!M-PESAアプリの機能紹介
公開日時:
2025/1/2 23:30

ケニアで生まれ、隣国タンザニアといったアフリカの国々や、インドを含む世界十数か国に進出しているモバイル送金・決済サービス「M-PESA」。2007年のサービス開始当初は、いわゆるガラケーの携帯電話システムに対応し、SMSを利用した手軽で低コストな個人間での送金サービスで注目された。しかし、その後はスマートフォンの使用者の拡大に合わせ、専用のアプリケーションを開発することで、アフリカ中に利用者を増やし、いまやアフリカ随一のフィンテック(FinTech)企業である。今回の記事では、M-PESAがケニア国内に拡大する大きな転機の一つとなった、同サービスのスマートフォン用のアプリケーションの機能について分析する。
(ご参考)前回記事 ケニア独自の送金システムM-PESAの歴史と成功要因に迫る

スマートフォンで利用できるM-PESAのアプリは2種類ある。一つは「M-PESA app」、もう一つは「M-PESA Business」である。
M-PESA appは個人間での利用がメインに作られており、M-PESA Businessは主にBtoBあるいはBtoC取引のためのアプリとなっている。共にGoogle playとApp storeでインストール可能である。なお、2024年12月7日現在、Google playではM-PESA appもM-PESA Businessも1000万ダウンロードを達成している。
また、前述の通り、M-PESAはケニアで誕生した金融サービスであるが、今やケニア国外でも広く利用されている。そのため、スマートフォン用のアプリは、 M-PESA Tanzaniaや M-PESA Safaricom Ethiopiaのように国別に対応したものも存在している。ちなみに、M-PESA appも M-PESA Businessもパソコン用のアプリケーションがあるが、今回はケニア国内で利用されているスマートフォン用のアプリを見ていこう。
まず、M-PESA appから解説を始めよう。2007年にサービスをスタートしたこちらのアプリは、主に個人間での利用に対応したものとなっている。
スマートフォン用のアプリを使用する際、気になるのは、そのセキュリティではないだろうか。 M-PESA appでは、指紋認証・顔人称・暗証番号のいずれかで本人確認ができるようになっている。また、セキュリティの観点で言うと、M-PESA appで取引(送金や売買等)をする際、毎回、取引の直前に、メールやSMS等で利用者本人に利用確認の連絡が行くようになっており、取引の二重確認のシステムが取られている。

また、M-PESA appの人気を高める一つの要因となっているのが、意外にも送金時になんらかのメッセージやGIF動画も一緒に送ることができるサービスであると言われている。例えば、誕生日プレゼントとして、幾ばくかのお金を送りたいというときに、「Happy Birthday」のメッセージやGIF動画と一緒に送金することができるのである。洋の東西を問わず、お金のやり取りというのはシビアな会話がつきものである。しかし、メッセージやGIF動画と一緒に送ることで、送金する方も受け取る方も、より楽しい気持ちでやり取りができるようになる。
そして、時と場合によっては、一人から複数の相手に送金する必要も生まれてくる。そうした時でも、M-PESA appを使うことで、送金者は最初に1度だけ本人確認をすると、その後は複数の人にそれぞれ異なる金額を送金する事も可能なのである。
また、M-PESA appによる送金自体も非常に簡単で、二次元バーコードを利用することで、送金と受け取りが簡単にできるようになっている。ちなみに送金を受け取った側は、自分のM-pesa口座にそのまま入金することもできるし、あるいは M-PESA の取扱店で現金として引き出して使うことも可能である。
また今では、M-PESAのアプリケーションからWESTAN UNIONという会社を通じて、ケニア以外の国に送金することも可能になっている。
しかし、最も重要なM-PESAのアプリケーションの特徴は、このアプリケーションを持っていると、与信をつけたりローンを組むことが可能になることである。この機能があることで、M-PESは送金・決済・預金・ローンをカバーするフルバンキングサービスを提供することができるようになった。このフルバンキングサービスは、一般的には銀行が提供しているものだが、ケニアでは正式な銀行システムではないM-PESAの提供するサービスの方が一般的になっているのである。
ちなみに、M-PESA利用時の手数料も明確に定められている。例えば、50-100ケニアシリングの送金時の手数料は4シリングとなっており、511から1011ケニアシリングの送金には9シリングの手数料がかかる。そして30000ケニアシリングを超えると100ケニアシリングを超える手数料が加算される。
一方、出金時の手数料は引き出す店舗がM-PESAの加盟店か否かで異なり、M-PESA加盟店の場合は50から100ケニアシリングの出金には5シリングの手数料が加算される。M-PESA非加盟店での引き出しには100ケニアシリングの引き出しまでは手数料が無料で、101ケニアシリングから500ケニアシリングの出金には8ケニアシリングの手数料が加算される。ちなみに、49ケニアシリング以下の出金は手数料は無料である。

ほかにもM-PESA appの魅力の一つは、アプリケーションの中に「ミニ・アップ(Mini app)」と呼ばれる、ショッピングアプリケーションが採用されていることにある。ミニ・アップとは、M-PESA Appの中から、航空券や列車・バスのチケットを購入や日用品などの様々な商品やサービスを直接購入することができるシステムである。このシステムは、中国の有名なショッピングアプリケーションである「アリババ」を参考にしたものと言われている。ちなみに2020年の時点では、ミニ・アップの利用に際し10%のキャッシュバックキャンペーンが開催されていた。
また、M-PESA appの容量は44メガバイト、M-PESA Businessは43メガバイトと比較的軽くて、インストールが簡単なアプリケーションとなっている。これは、使われているスマートフォンのスペックが比較的低い場合でも、問題なくアプリケーションが作動するようにと考慮されたためである。
このように、M-PESA appは、もともとM-PESA が持っていた個人間の送金システムに「ミニ・アップ」のシステムが追加されたものとなっており、個人が利用するには、ほぼ十分なものとなっている。
参考URL https://youtu.be/Nyqs9MOgEdk?si=pkKPrvAUpFfe1hEN
参考URL https://newsroom.safaricom.co.ke/innovation/15-things-you-probably-didnt-know-about-m-pesa/
参考URL アフリカのイノベーションの原点:「M-PESAを知ろう」椿 進 - AAIC Holdings参考URL https://www.jitimu.com/2023/05/safaricom-mpesa-agent-commission-rates-2021/
一方、2020年にサービスをスタートしたアプリケーションの M-PESA Businessは、主にBtoBあるいはBtoCの取引に対応したアプリとなっている。
もともと、M-PESAは既存の銀行を介在させず、個人間で利用可能な送金サービスを提供することで、アフリカにおけるその地位を確立してきた。しかし、M-PESA Businessのサービスを開始することで、もう一つ別のビジネスのチャンネルを持つようになった。
M-PESA Businessのアプリケーションが提供しているサービスは、例えば以下のものがある。
・支出や収入の確認
・最近行った取引の確認
・取引(支払い)の予約
・サービスや商品の購入
・取引に使う口座の変更
・二次元バーコード利用による取引
上記のようなサービスを利用することで、法人ユーザーは自社の従業員の給与や必要経費を管理・支払いすることが簡単になった。また、これまでのサービスと同様、M-PESA代理店からの現金を引き出すことも可能である。
M-PESA Businessで最も重要な機能は、「LIPA NA MPESA 」と呼ばれる法人ユーザーが自社の顧客に対し、支払い方法としてキャッシュレス決済を提供できる機能である。ケニアでは多くの人が M-PESA のアカウントを持っているので、日常の取引を M-PESA と M-PESA Businessのアカウントを通じてやり取りすることで、現金を介さずにスマホ上で取引が成立してしまうのである。
ちなみに、もし同じ人物がLIPA NA MPESAのアカウントとM-PESA appのアカウントを両方持っていたとしても、アプリ上ではそれぞれ別名義として扱われる。そのため、本人が気が付かないうちに、個人の生活資金(=M-PESA appのアカウントにある資金)が事業資金(=LIPA NA MPESAのアカウントにある資金)に流れ込まないようなシステムになっている。

また、M-PESA appと同様に、 M-Pesa Businessもミニ・アップを取り入れており、アプリの中で商品やサービスを購入することが可能である。その購入資金は、直接 M-PESA Businessのアカウントから差し引かれることになる。
以上のように、M-PESA BusinessはBtoBかBtoCでの取引のためのアプリケーションとして開発された。一般企業だけでなく、民間・公立の教育機関・NGO・宗教法人・政府関係と多岐にわたっている。そのため、学校の学費をはじめとして、その他学校に関する費用も M-PESA app かM-PESA Bussinessのアプリケーションで、支払いができてしまう。
また、ケニアでは公共料金の支払いもM-PESA appかM-PESA Bussinessのアプリケーションから支払うことができるようになっており、個人や企業が支払う税金もM-PESA appかM-PESA Bussinessで支払い可能である。
もはや、M-PESAのアプリケーションは、ケニアで生活していくのに必要不可欠な生活インフラであると言えるだろう。
参考URL https://youtu.be/Nyqs9MOgEdk?si=pkKPrvAUpFfe1hEN
参考URL https://m-pesaforbusiness.co.ke/
参考URL https://www.safaricom.co.ke/main-mpesa/m-pesa-services/lipa-na-m-pesa/lipa-na-m-pesa-account-opening
参考URL https://www.vodacom.co.ls/financial-services/help-and-support/mpesa-business-app/
今回の記事では、M-PESAの2つのスマートフォン用アプリケーションについて、分析をした。シンプルで使いやすく、そのうえ必要な機能を備えたM-PESAアプリケーションは、多くの人に受け入れらることになった。その結果、ケニア国内でM-PESAが使えないところはないというくらいに、その市場を拡大している。
いまやM-PESAは、アフリカ最大のフィンテック企業であり、ケニアにおいて、電気や水道と同じくらい重要な社会的インフラというべき存在になっているのである。
著者 對馬由佳理
北海道函館市出身、現在スペインのサラマンカ在住。サラマンカ大学でPhDを取得(ラテンアメリカ研究)後は、スペインでライターや通訳・翻訳者として活動中。
この記事に関するお問い合わせや、アフリカビジネスに関するご相談は、AA Health Dynamics株式会社のお問合せフォーム、または、Email [info@aa-healthdynamics.com]までお気軽にどうぞ!
この記事を書いたライター
對馬由佳理
ライター紹介 北海道函館市出身、現在スペインのサラマンカ在住。サラマンカ大学でPhDを取得(ラテンアメリカ研究)後は、スペインでライターや通訳・翻訳者として活動中。
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