AA Health Dynamics Original Contens
blog /
アフリカ各国の医療インフラ状況に迫る
公開日時:
2025/2/6 23:30
アフリカ大陸の医療インフラは、国ごとに大きな差があり、経済規模や政府の取り組みによってその充実度が異なります。南アフリカ共和国のように高度な医療設備と民間医療が発展している国もあれば、ケニアのようにテクノロジーを活用した遠隔医療が進む国、ナイジェリアのように人口増加に伴い医療機関の需要が急増している国もあります。本記事では、南アフリカ、ケニア、ナイジェリアを例に、それぞれの医療インフラの現状、課題、今後の展望について詳しく解説します。

ここでは、現在(2025年)アフリカ諸国の医療インフラはどのような状況なのかをお伝えします。
アフリカの医療インフラは、国によってさまざまな異なる課題に直面しています。その主な要因は、資金や資源の不足または医療従事者の不足から来ています。
なぜならば、現在でも継続している政治不安、民族間の対立、貧困などにより、多くのアフリカ諸国は、医療に割り当てられる財源が限られているためです。
また、医療インフラ自体の知識が乏しい国では、国家予算をあまり医療インフラにかけないため、医療施設、設備、必要物資が不十分になっているのが現状です。この資金不足が、質の高い医療サービスの提供を妨げています。
それだけでなく、資金や資源はあっても医療サービスに不可欠な医療スタッフが不足しているという課題も深刻です。
医師、看護師、専門医など、訓練を受けた医療従事者が決定的に不足している原因はさまざまですが、一因としてある一定の医療従事者は、海外により良い機会を求め移住してしまうことが挙げられています。
そのほかにも、政府自体が医療従事者への教育や実習などへの認識や経験が乏しいため、人材教育も今後の課題になってきています。
※参照URL:アフリカの 医療インフラを 変革する、 スタートアップ支援の役割と成功事例 | AA Health Dynamics ブログ
※参照URL:Key Strategies in Strengthening Health Infrastructure Development in Africa

上記のような資金源や資源、人材不足だけでなく、 医療サービスへのアクセス制限も大きな課題の1つです。
特に農村部や遠隔地では、地理的な障壁が医療施設へのアクセスを妨げており、医療サービスを受けたくても、地理的要因などによりその医療施設まで行けないため命を落としてしまう人も少なくありません。
そのため、医療インフラだけでなく、交通インフラの不備や医療サービスの偏在が、この課題の一因ともなっています。
また、 アフリカ諸国は、感染性疾患(HIV/AIDS、マラリア、結核など)と非感染性疾患(糖尿病や心臓疾患など)の蔓延という二重の負担にも直面しています。元々の感染症に加え、都市部では生活が豊かになり、ライフスタイルも欧米諸国に近づき、富裕層も増えてきました。
しかし、これらの富裕層やライフスタイルの変化は、成人病とも言われる糖尿病や心臓病なども急増し、すでに疲弊している医療制度にさらなるプレッシャーを与えています。
そのほか、アフリカ諸国は広大な土地が広がる分、気候変動の影響にも医療インフラが左右されやすいのが現状です。異常気象、洪水、干ばつなどの気候関連事象は、健康危機、食糧不安、疾病の蔓延を引き起こし、医療インフラをさらに困難なものにしています。
※参照URL:Identifying Key Challenges Facing Healthcare Systems In Africa And Potential Solutions - PMC
※参照URL:People must understand: we in Malawi are paying for the climate crisis with our lives | Khumbize Kandodo Chiponda | The Guardian
南アフリカの医療インフラは、公的部門と民間部門からなる二層構造で特徴付けられ、それぞれが明確な課題と格差を抱えているのが現状です。

南アフリカの人口の約84%が公的医療サービスを利用しており、公的医療セクターでは、3,800以上の診療所と病院のネットワークを通じて無料の医療サービスを提供しています。
しかし、資源の制約も多く、医療施設の設備はメンテナンスの人材が乏しいため度々故障し、薬品の不足にも悩まされています。
最近の調査では、評価対象となった696施設のうち、薬剤の入手可能性や適切な感染管理など、要求されるパフォーマンス基準の80%を満たしていたのはわずか5施設であるという報告もされています。
また、医療従事者の人材不足も深刻な問題になっています。2013年のデータでは、医師の欠員率が56%、看護師が46%と報告されています。また、全医師の約79%が給与や福利厚生の面から民間セクターで勤務しており、公的セクターでの人材不足が顕著となっています。
※参照URL:Healthcare in South Africa: how inequity is contributing to inefficiency - Wits University
※参照URL:Healthcare in South Africa - Wikipedia
※参照URL:South Africa moves to implement national health bill despite resistance | Reuters
民間医療セクターとは、政府が運営する公的医療機関とは異なり、民間企業や個人によって運営される医療機関、病院、クリニック、製薬会社、保険会社などの医療関連サービスを提供する部門を指します。
南アフリカでは、人口の約16%が民間医療保険に加入しています。特に富裕層が利用しており、質の高いサービスと高度な医療技術の提供が特徴的です。
Netcare、Life Healthcare、Mediclinicという3大病院グループが民間病院市場の約75%を占めています。 しかし、高度な医療設備とサービスを提供していますが、費用が高いため、多くの国民には手の届かない状況です。
※参照URL:Healthcare in South Africa: how inequity is contributing to inefficiency - Wits University
※参照URL:Healthcare in South Africa - Wikipedia

政府は公的医療セクターと民間医療セクターの格差を是正するため、国民健康保険(NHI)制度の導入を進めており、2024年5月15日にシリル・ラマポーザ大統領がNHI法案に署名しました。
この制度は、全ての南アフリカ国民に公平な医療サービスを提供することを目指しています。 NHIは、南アフリカの二層構造のシステムを大幅に見直し、国民皆保険を実現することを目的としてます。
しかし、さまざまなステークホルダーからの抵抗や、資金調達モデルへの懸念など、その実施は難題に直面しており、本格的に南アフリカ全ての人たちが利用可能になるのはまだ先のことになりそうです。
※参照URL:Healthcare in South Africa - Wikipedia
※参照URL:South Africa moves to implement national health bill despite resistance | Reuters
ケニアの医療インフラは、公的および私的セクターが共存する二重構造を持ち、地域や経済状況によって医療サービスへのアクセスや質に大きな差があります。しかし、その構造は複雑に作られているため、南アフリカ共和国より民意が反映している医療インフラになってきています。

構造: ケニアの公的医療システムは、6つのレベルに分類されています。
レベル1: コミュニティヘルスサービス(地域保健活動)
レベル2: ディスペンサリーおよびクリニック(診療所)
レベル3: ヘルスセンター(保健センター)
レベル4: サブカウンティ病院(地区病院)
レベル5: カウンティリファラル病院(県立紹介病院)
レベル6: ナショナルリファラル病院(国立紹介病院)
これらの施設は、予防、促進、治療、リハビリテーションの各サービスを提供しています。 一見充実しているように見えますが、資源の制約も主な課題になっています。
公的医療施設は、医療用品や医療機器の不足にしばしば直面し、それが医療ケアの質にも影響を与えています。例えば、公立病院は低料金で受診可能ですが、設備や技術が不十分であり、安心して治療を受けられる環境ではありません。
また、特に農村部では医療従事者の不足が顕著であり、南アフリカと同様に、医療サービスの提供に格差が生じているのが現状です。
また資金不足も大きな課題の1つです。保健分野への予算配分は、国家予算の15%を下回っており、サービスの拡大や改善に制約がかかっています。
2019/2020年度の国家予算において、医療セクターへの割り当ては全体の4.8%と低く、これはサブサハラアフリカの平均である4.98%を下回っています。
※参照URL:https://www.ke.emb-japan.go.jp/itprja/00000608.html?utm_source=chatgpt.com
※参照URL:Kenya - Wikipedia
私立病院やクリニックは、主に都市部や富裕層向けに高度な医療サービスを提供しています。多くの医療機器や設備が整っているため、さまざまな医療サービスを提供しています。
現在は、都市部に多いですが、年々その数を増やし、現在では郊外にも建設中の医療セクターがあるなど、公的医療セクターよりその規模を拡大しています。
しかし、どの国でも同様に民間医療セクターは費用が高いため、一般的な家庭では利用が難しく、医療アクセスの格差が生じています。
※参照URL:開発途上国・新興国等が抱える保健医療課題に対する日本・他 国の参入状況
※参照URL:ケニア編
ケニア政府は、デジタルヘルスの推進を目指しています。特に力を入れているのはインフラ整備:と人材育成であり、特に地方とのコミュニケーションを強化するため、インターネット環境やモバイル機器の導入を進めています。
それだけでなく、デジタルヘルスを推進するための人材確保と、能力開発の取り組みにも力を入れているのがケニアの医療インフラの特徴です。2025年1月29日現在、保健省は医療サービスのデジタル化に向けた取り組みを加速しています。
例えば、スマホなどの電子デバイスからそのまま医療サービスにアクセスでき、自分の疾患・怪我などの治療における症状の経過や結果を自分で管理できるようなアプリの導入など、新しい試みを実施しています。
また、 ケニアの地域保健戦略2020-2025では、今まであまり焦点が当たってこなかった、地域ごとの医療サービスを見直し、地域保健をより広範なシステムに統合し、パートナーシップを促進しようとしています。
そのほか、他の国にはない取り組みとして太陽光発電設備への強化が挙げられます。 キッズ・オペレーティング・ルーム(KidsOR)のような組織は、手術室で信頼できる電力を確保するために太陽光発電システムを導入し、医療サービスが満足に行えなくなる頻繁な停電に対処しています。
そのため、 2024年3月、ケニア政府は、プライマリー・ヘルスケア・サービスの強化と制度的能力の強化のため、世界銀行から2億1,500万ドルを確保しました。
※参照URL:開発途上国・新興国等が抱える保健医療課題に対する日本・他 国の参入状況
※参照URL:ケニア編
※参照URL:Ministry of Health Accelerates Digital Transformation in Healthcare※参照※参照URL:https://chwcentral.org/wp-content/uploads/2021/07/KenyaNat%27lCommunityHealthStrategy_2020-2025.pdf?utm
※参照URL:How a Scots charity is using the sun to save lives across the world
上記の2か国と同様に、ナイジェリアの医療インフラは、公的および民間セクターが共存する二重構造を持ち、地域や経済状況によって医療サービスへのアクセスや質に大きな差があります。

ナイジェリアの公的医療システムは、一次医療(プライマリーヘルスケア)から三次医療(専門医療)までのレベルに分類され、各レベルで異なる医療サービスを提供しています。
他の国々と同様に、資金不足は大きな課題になっています。政府の医療支出は増加傾向にあるものの、依然として医療インフラの整備や質の高い医療サービスの提供には不十分であり、多くの国民が医療費を自己負担しています。
また、人材不足も深刻です。 医師数は全国で約74,000人と推定されており、人口約2億人に対して医療専門家が不足しています。特に農村部では医療サービスの提供が困難です。
ナイジェリアでの医師の地位は低いわりに教育年数に時間がかかるため、裕福層は海外に域医師をやるなど、国外への流出も著しく、医療設備は整ったとしても医療スタッフが不足している状態です。
そのほか、予算不足のため設備投資まで行きつかず、多くの公立医療施設は設備が老朽化しており、適切な医療サービスを提供する能力が制限されています。
※参照URL:アフリカ保健システム 情報収集・確認調査 最終報告書 ナイジェリア
※参照URL:ナイジェリア編
民間医療セクタ―は、主に都市部や富裕層向けに高度な医療サービスを提供しており、最新の医療設備を備えた大規模な総合病院が新規開業するなどの特徴を持っています。
民間医療セクターと言っても、決して最新の設備が揃っているわけではありません。現在イジェリアでは、CTスキャンやMRIなどのイメージング機器が不足しており、市場の成長が期待されています。
また、がん患者の増加に伴い、放射線治療装置や放射性医薬品の需要や糖尿病治療にも注力し、人工透析装置も必要ですが、まだまだ日本や欧米諸国の医療設備と比べると不足している部分も多いです。。
※参照URL:富裕層向け中心に医療サービス拡充(ナイジェリア) | アフリカにおける医療機器ビジネスの可能性 - 特集 - 地域・分析レポート
ナイジェリア政府は、上記に挙げた多くの課題のために、さまざまな試みを行っています。まず始めに、プライマリー・ヘルスケアの活性化です。
「基本的ヘルスケア・サービス提供の加速化」プロジェクトは、全国774の地方自治体区域に、世界標準のプライマリー・ヘルスケア・センター(PHC)を少なくとも1ヵ所設置し、質の高いケアへのアクセスを強化することを目的としています。
次に保健支出の増加に関しても既に焦点を当てその対策に取り組んでいます。国民1人当たり年間30ドル(年間約60億ドル)を追加投資することで、必要不可欠な保健医療サービスのカバー率を大幅に改善し、罹患率と死亡率を低下させることに成功しています。
そのほか、インフラ整備にも現在では力を入れて取り組んでいます。邦政府も州政府も、民間投資家とともに、病院新設プロジェクトや既存の医療センターの改修を行い、サービス提供の改善に寄与しています。
それ以外にも、2024年9月、世界銀行はナイジェリアに対する15億7,000万ドルの融資パッケージを承認し、5億7,000万ドルがプライマリー・ヘルスケア・サービスの強化に割り当てられました。
このように、ナイジェリアではアフリカ諸国でも経済発展国であるという強みを生かし、医療インフラやヘルスケアサービスの充実を実践しています
※参照URL:Strategic partnerships towards transforming health systems and outcomes in Nigeria. Strategic partnerships towards transforming health systems and outcomes in Nigeria. | WHO | Regional Office for Africa
※参照URL:The Lancet Nigeria Commission: investing in health and the future of the nation - PMC
※参照URL:Healthcare Resource Guide - Nigeria

アフリカの医療インフラは国によって大きく異なり、経済力や政府の取り組みによりその発展度合いが左右されることが分かっています。今回はアフリカ諸国のなかでも比較的に経済的な発展を遂げている3国に焦点を当ててみました。
まず始めは、南アフリカ共和国です。南アフリカでは、公的医療と民間医療の二層構造があり、民間医療は高度な設備と質の高いサービスを提供する一方、公的医療は予算不足や人材不足に直面しています。そのため、政府は「国民健康保険(NHI)」を導入し、医療格差の是正を目指しています。
一方、ケニアは、デジタルヘルスやモバイルヘルス(mHealth)などの技術を活用し、遠隔地への医療アクセスを改善しようとしているのが特徴です。しかし、公的医療機関は資金不足や医療機器の老朽化に悩まされており、都市部と地方での医療格差が顕著であることが今後の課題です。
ナイジェリアでは、CTスキャンやMRIなどのイメージング機器が不足し、医療機関の設備も十分ではありません。特にがん治療分野での需要が増えており、放射線治療装置や放射性医薬品の市場が拡大しています。また、医療従事者の海外への流出や予算不足も深刻な課題になっています。
これらの国々に共通する課題は、医療設備の不足、人材の確保、医療アクセスの地域格差です。そのため、各国政府や民間企業、国際機関が協力し、持続可能な医療インフラの構築がアフリカ諸国全体で求められています。
ライター紹介
増田さなえ
米国ピッツバーグ州立大学卒業後、セントマシュー医科大学とウィンザー医科大学に進み医学博士取得、救急医師として、米国やカリブ海の医療に従事する。2014年に出産のため休職し、ウェブライターを始める。2014年からカリブ海の救急医として2019年まで働く。2020年からは米国に戻りウェブライター専門で活動中。
この記事に関するお問い合わせや、アフリカビジネスに関するご相談は、Email [info@aa-healthdynamics.com]までお気軽にどうぞ!
この記事を書いたライター
増田さなえ
米国ピッツバーグ州立大学卒業後、セントマシュー医科大学とウィンザー医科大学に進み医学博士取得、救急医師として、米国やカリブ海の医療に従事する。2014年に出産のため休職し、ウェブライターを始める。2014年からカリブ海の救急医として2019年まで働く。2020年からは米国に戻りウェブライター専門で活動中。
関連記事
2024/12/27 14:03
アフリカの現地課題に応える、ドクタージャパン株式会社の高品質医療針とトータル技術支援
ドクタージャパン株式会社は、日本の精密医療機器技術を礎に、アフリカの医療課題解決に本格的に挑戦しています。麻酔針・生検針などの高品質医療機器を現地ニーズに合わせて改良・提供するだけでなく、医療従事者への技術研修や物流体制の整備にも力を注いでいます。単なる製品供給を超え、持続可能な医療体制構築を目指す...
2025/10/2 23:30
2024/7/10 14:20
アフリカ母子の命を守る——African Mothers株式会社の挑戦とデジタル保健サービスの最前線
アフリカでは現在でも妊産婦や新生児の死亡率が高く、医療アクセスや情報共有が深刻な課題となっています。African Mothers株式会社は、妊婦の健康記録をデジタルで一元化するパーソナル・ヘルス・レコード(PHR)アプリを開発し、命を守る情報ネットワークを構築しています。この記事では、アフリカの母...
2025/9/25 23:30
2024/12/27 14:03
ツインバードの先端冷却技術で拓くアフリカ医療インフラ革新
日本の家電メーカー・ツインバードは、独自の冷却技術を武器に、ワクチン輸送や医療インフラの課題解決を目指してアフリカでの事業展開を拡大しています。TICAD9公式イベントにも登壇した同社の挑戦は、日本の中小企業が社会課題と新興巨大市場の双方に応える“国際展開モデル”として大きな注目を集めています。本編...
2025/9/18 23:30
2024/12/27 14:03
Africa Health ExCon 2025 開催まとめ
2025年6月、エジプト・カイロで開催されたアフリカ最大級の医療展示会「Africa Health ExCon 2025」には、医療・ヘルスケア分野の最新技術や製品が世界中から集結しました。中でも、日本企業の出展が大きな注目を集め、現地の課題に即したソリューション提案が高く評価されました。本記事では...
2025/9/11 23:30