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検査技術×人材育成――シスメックスがアフリカで築く持続可能な医療の未来
公開日時:
2025/7/10 23:30
シスメックス株式会社は、世界190カ国以上で臨床検査機器や試薬を展開する日本発のグローバル医療機器メーカーです。特にアフリカ市場では、現地法人の設立や公的機関との連携、医療従事者の育成を通じて、医療インフラの進化と社会課題の解決に大きく貢献してきました。本記事では、シスメックスの企業概要からアフリカでの事業展開、現地での成功の鍵、そして今後の展望まで、同社の歩みと強みを多角的にご紹介します。
シスメックス株式会社(Sysmex Corporation)は、世界の臨床検査分野をリードする日本発のグローバル企業です。その企業像を、箇条書きを交えながら分かりやすくまとめます。
設立:1968年2月20日
本社所在地:兵庫県神戸市中央区脇浜海岸通1丁目5番1号
資本金:148億8,782万円(2025年3月31日現在)
代表者:
代表取締役会長兼CEO:家次 恒
代表取締役社長:浅野 薫
従業員数:連結約11,500名(2025年3月末時点)
上場取引所:東京証券取引所 プライム市場
事業内容・主力分野
臨床検査機器・検査用試薬・ソフトウェアの開発、製造、販売、輸出入
血液検査(ヘマトロジー)、血液凝固検査、尿検査分野で世界トップシェア
医療機関、検査センター、研究機関、動物病院などに製品・サービスを提供
グローバル展開
世界190カ国以上で事業展開
40カ国以上に60社超のグループ会社
欧州・中東・アフリカ(EMEA)地域の統括拠点をドイツに設置
2025年にはギリシャやケニアなど新たな現地法人も設立
企業理念・ビジョン
ミッション:「ヘルスケアの進化をデザインする。」
長期ビジョン:「より良いヘルスケアジャーニーを、ともに。」
シスメックスは、世界中の医療現場に不可欠な検査機器・サービスを提供し続けることで、グローバルヘルスケアの進化を牽引しています。
【参考URL】
https://www.sysmex.co.jp/corporate/info/profile.html
https://ja.wikipedia.org/wiki/シスメックス
https://www.sysmex.co.jp/corporate/understanding-sysmex/

シスメックスは、アフリカ市場を成長戦略の重要な柱と位置づけ、早くから現地法人の設立や販売・サービス体制の強化を進めてきました。アフリカ全土を4つの地域に分け、南アフリカ、ガーナ、ブルキナファソ、エジプト、ナイジェリアなどに現地法人を設立。2025年にはケニア・ナイロビにSysmex East Africa Ltd.を新設し、東アフリカ9カ国での直接販売とカスタマーケア体制を強化しています。
アフリカでは、血液検査機器や試薬、検査情報システムの提供に加え、現地医療従事者へのトレーニングや品質管理支援、学術啓発活動も積極的に展開。特にガーナでは、2015年に現地法人を設立し、2017年からは代理店販売から直接販売へ移行。顧客との直接的なコミュニケーションを通じて、地域の特性や課題に応じた提案・サポートを行っています。
アフリカ市場は今後も人口増加と経済成長により医療需要が拡大する見込みであり、シスメックスは現地ニーズに即した製品・サービスの提供を通じて、医療インフラの進化を支えています。
【参考URL】
https://www.sysmex.co.jp/news/2025/250407.html
https://www.sysmex.co.jp/news/2015/151201.html
https://bowlabjp.com/news/detail/news/456
シスメックスのアフリカ進出は、1980年代に欧州統括拠点(ドイツ)を設立したことに始まります。その後、アフリカ各国の医療インフラ整備や感染症対策のニーズに応える形で、現地法人や販売拠点を拡大。2006年に南アフリカ、2013年にブルキナファソ、2015年にガーナ、2018年にエジプトと、段階的に現地法人を設立し、販売・サービス体制を強化してきました。
現地法人設立の背景には、アフリカの医療現場が抱える「検査体制の未整備」「人材不足」「感染症の蔓延」などの課題があります。シスメックスは、現地代理店や国際機関、保健省との連携を通じて、検体検査機器の普及とともに、医療従事者の育成や品質管理体制の強化にも注力してきました。
また、経済成長や医療費支出の増加を背景に、アフリカ市場の成長性を見据えた積極的な投資・事業拡大を進めています。
【参考URL】
https://www.sysmex.co.jp/news/2015/151201.html
https://www.sysmex.co.jp/news/2025/250407.html
https://www.doyukai.or.jp/policyproposals/uploads/docs/190227a.pdf
アフリカでは、医療インフラの未整備や医療従事者の不足、感染症(HIV/AIDS、マラリア、結核など)の蔓延が深刻な社会課題となっています。シスメックスは、血液検査機器や尿検査装置、マラリア診断装置などを提供し、正確かつ迅速な検査体制の構築を支援しています。
特にガーナでは、JICAの公募事業として「尿検査自動化技術普及促進事業」を展開。全自動尿検査搬送システムの導入と現地医療人材の育成を通じて、NCDs(非感染性疾患)の予防・早期発見・治療促進に貢献しています。
また、マラリア診断装置「XN-31」は、1分で高精度なマラリア診断が可能で、アフリカ各地の医療現場で活用されています。

シスメックスは、現地医療従事者へのトレーニングや学術啓発活動にも注力。シスメックスアカデミーやオンライントレーニング「Caresphere™ Academy」を通じて、装置の操作・メンテナンス研修や臨床的価値の教育を提供しています。
さらに、検査室の品質管理体制が国際基準ISO 15189に準拠するよう、独自のメンターシップ・トレーニングを実施。ガーナでは、臨床検査室のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援するネットワークソリューション「Caresphere™」の導入調査も進められています。
ガーナでは、味の素ファンデーションやNECと連携し、乳幼児と母親の健康改善プロジェクトを推進。マラリア診断装置の導入や人材トレーニング、栄養知識の啓発、サプリメントの普及、ICTを活用した健康管理アプリの開発など、多面的なアプローチで母子保健の向上に取り組んでいます。
また、HIV/AIDSや結核など三大感染症対策にも注力し、現地保健省や国際機関と連携した検査体制の強化、啓発活動を展開しています。

シスメックスは、アフリカでの事業展開において、JICA(国際協力機構)、経済産業省、現地保健省、WHO(世界保健機関)など多くの公的機関・国際機関と連携してきました。
JICAとの連携
2018年、JICA「開発途上国の社会・経済開発のための民間技術普及促進事業」に採択され、ガーナ国立教育病院に全自動尿検査搬送システムを導入。現地医療従事者向けの研修やセミナーも実施し、NCDs対策の一環として尿検査自動化の臨床的価値を普及しました。2020年には「JICA-SDGsパートナー」に認定されています。ナミビア共和国でもJICAの事業として臨床検査室品質管理技術普及促進事業を展開しました。
経済産業省との連携
2023年度には、経済産業省の「アフリカ等市場活力取り込み事業実施可能性調査事業(AfDX)」に採択され、ガーナで臨床検査室の外部精度管理をリアルタイムに実施できるアプリケーション(Caresphere™ XQC)のトライアル導入と現地医療機関へのトレーニングを実施しました。
現地政府・国際機関との連携
アフリカ各国の保健省やWHOと連携し、医療アクセス向上や検査体制強化に取り組んでいます。味の素ファンデーション、NECとともに、ガーナ保健サービスや国連世界食糧計画(WFP)と連携した母子保健・栄養改善プロジェクトも推進しています。
官民連携の意義
官民連携(PPP)を通じて、現地の社会課題解決とビジネスの両立を目指し、公的機関のネットワークや資金、現地政府との信頼関係を活用し、持続可能な医療インフラの構築や人材育成、品質管理体制の強化を実現しています。
シスメックスがアフリカで事業を成功させてきた背景には、以下のような「成功の鍵」があります。

1. 現地密着型の事業展開
早期から現地法人を設立し、代理店任せにせず自社スタッフによる直接販売・サポート体制を構築。現地の医療現場や顧客の声をダイレクトに吸い上げ、製品・サービスに反映しています。
現地医療従事者への継続的なトレーニングや、検査室の品質管理支援を通じて、単なる機器提供にとどまらない「伴走型」の価値提供を実現しています。
2. 官民・国際機関との連携力
JICAや経済産業省、現地保健省、WHOなど公的機関・国際機関と連携し、社会課題解決とビジネスの両立を図っています。公的資金やネットワークを活用し、現地政府との信頼関係を築くことで、持続可能な事業基盤を確立しています。
3. 製品・サービスの総合力と技術力
世界トップシェアの検体検査機器・試薬・ソフトウェアを一体で提供し、現地の医療インフラや疾病構造に合わせたソリューションを展開。マラリア診断装置「XN-31」など、アフリカ特有の医療課題に対応した製品開発力も強みです。
研究開発力や知的財産力を活かし、他社が模倣しにくい高付加価値のサービスを提供しています。
4. 持続的な人材育成と現地化
現地スタッフの採用・育成、現地医療従事者への教育・研修を重視し、現地社会に根ざした事業運営を徹底。現地人材の自立やキャリア形成を支援することで、地域社会との共生を実現しています。
5. SDGs・ESG経営と社会的価値の創出
SDGsやESG経営を経営戦略の中核に据え、社会的価値と企業価値の両立を追求。母子保健や感染症対策、栄養改善など、社会課題解決型のプロジェクトを積極的に推進しています。
これらの要素が相互に作用し、シスメックスはアフリカでの事業拡大と社会的インパクトの両立を実現しています。
シスメックスの機器・サービス導入により、アフリカ各地の医療現場では検査の精度・効率が大幅に向上。夜間や緊急時の診断が迅速に行えるようになり、感染症や貧血などの早期発見・治療が可能となりました。
また、現地医療従事者のスキル向上や検査室の品質管理体制の強化を通じて、医療サービス全体の質が底上げされています。母子保健プロジェクトや感染症対策の推進により、乳幼児や妊婦の健康状態が改善。栄養指導やサプリメント普及、ICTを活用した健康管理の普及など、地域社会全体の健康リテラシー向上にも寄与しています。
アフリカ・中東・トルコ(META)地域の売上高は、2025年3月期で前年比2桁成長を達成。全地域で増収増益となり、グローバルで持続的な成長を実現しています。マラリア診断装置「XN-31」の開発・普及による「ゼロマラリア賞」受賞や、JICA-SDGsパートナー認定など、社会的評価も高まっています。
【参考URL】
https://www.sysmex.co.jp/ir/library/quarter/241106_pr_j.pdf
https://malarianomore.jp/archives/13709
https://www.sysmex.co.jp/csr/news/2020/20200929.html

シスメックスは、アフリカ市場を今後の成長ドライバーと位置づけ、現地法人の新設や販売・サービス体制の強化、現地生産の検討など、積極的な事業拡大を進めています。2033年度には売上高1兆円以上、営業利益率20%以上を目標に掲げ、グローバルでの2桁成長を目指しています。
今後は、現地ニーズに即した製品・サービスの開発、医療人材育成や品質管理支援の深化、官民連携による社会課題解決型ビジネスの創出など、「共創型イノベーション」の推進が期待されます。
また、SDGsやUHC(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)達成に向け、現地パートナーや国際機関との連携を強化し、アフリカ発のイノベーションをグローバルに展開する構想も描かれています。
【参考URL】
https://www.sysmex.co.jp/corporate/activities/growth-strategy.html
https://www.sysmex.co.jp/ir/library/annual-reports/Sysmex_Report_2024_A4.pdf
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF1727B0X10C22A8000000/
シスメックス株式会社は、世界190カ国以上で医療検査機器・試薬・ソフトウェアを展開し、アフリカをはじめとする新興国市場で医療インフラの進化と社会課題の解決に貢献しています。現地法人の設立や人材育成、品質管理支援、官民連携によるプロジェクト推進など、単なる製品提供にとどまらない「共創型イノベーション」を実践しています。
今後も、アフリカの持続可能な発展とグローバルな医療課題解決に向けて、シスメックスの挑戦は続きます。現地の人々とともに歩み、社会的価値の創出とSDGs達成に向けた新たな一歩を踏み出していくことでしょう。
【参考URL】
https://www.sysmex.co.jp
https://www.sysmex.co.jp/news/2025/250407.html
https://www.sysmex.co.jp/csr/social/access/
https://www.sysmex.co.jp/ir/library/quarter/241106_pr_j.pdf
https://malarianomore.jp/archives/13709
https://www.kobe-np.co.jp/news/keizai/202206/0015354092.shtml
https://www.sysmex.co.jp/news/2018/180426.html
https://www.sysmex.co.jp/csr/news/2020/20200929.html
https://www.sysmex.co.jp/ir/library/annual-reports/Sysmex_Report_2024_A4.pdf
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF1727B0X10C22A8000000/
AA Health Dynamicsは、アフリカ市場における進出支援・事業伴走・現地連携構築の専門家集団です。 日立製作所のような大手の戦略を中小企業向けにカスタマイズし、実行可能なビジネスモデルの設計・検証・現地実装を一貫してご支援します。
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※本記事は公式サイト、プレスリリース、業界紙、JICA等の公的情報をもとに執筆しています。さらに詳しい情報は、各URL先をご参照ください。
この記事を書いたライター
原健太
東京農業大学大学院修士課程を卒業後、同大学にて助手として勤務。2014年にJICA青年海外協力隊として野菜を通じたヘルスプロモーションを行うため、サモア独立国に赴任。帰国後、立命館大学にて大学リサーチアドミニストレーター(URA)として、センターオブイノベーション(COI)ポストアワード業務、知的財産管理、新規事業開発、プロジェクトマネジメントに従事したのち、予防医療マーケティングを行う株式会社キャンサースキャンの子会社である株式会社AfricaScanのゼネラルマネージャーとしてケニア・東アフリカの医療課題解決や健康増進の事業に従事。2022年、AA Health Dynamics株式会社を設立。その後株式会社キャンサースキャンより事業譲渡を受け、代表取締役として現地の医療教育、医療クリニック、医療ファイナンスのサービスを提供する。
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