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現地資源×衛生ノウハウで切り拓く――サラヤ流アフリカBOPビジネスの実践と成功の鍵

2025.05.29Media

現地資源×衛生ノウハウで切り拓く――サラヤ流アフリカBOPビジネスの実践と成功の鍵

現地資源×衛生ノウハウで切り拓く――サラヤ流アフリカBOPビジネスの実践と成功の鍵

アフリカ進出を目指す邦人企業にとって、現地社会とともに成長するビジネスモデルは大きなヒントとなります。サラヤ株式会社は、ウガンダを拠点に現地生産・現地雇用・衛生教育を組み合わせた持続可能な事業を展開し、「消毒液=サラヤ」と呼ばれるほどのブランド力を確立。ユニセフやJICAなど官民連携を活かし、社会課題解決と収益性の両立を実現しています。その現場力と柔軟な戦略から、アフリカ市場で成功するための実践知を学びます。

1.サラヤ株式会社の企業概要と理念

サラヤ株式会社は1952年、大阪で創業しました。戦後日本で赤痢やコレラなどの感染症が蔓延する中、「衛生状態が整わないと社会基盤が整わない」との創業者の思いから、日本初の薬用手洗い石けん液と専用容器を開発し、正しい手洗いの普及を通じて社会課題の解決に取り組んできました。

現在は、家庭用・業務用洗浄剤・消毒剤・うがい薬などの衛生用品や薬液供給機器の開発・製造・販売、食品衛生・環境衛生のコンサルティング、食品等の開発・製造・販売も手がけています。

「衛生」「環境」「健康」をキーワードに、SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」にも貢献するグローバル企業です。

  • 本社所在地:大阪府大阪市
  • 創業:1952年(昭和27年)
  • 設立:1959年(昭和34年)
  • 資本金:4,500万円
  • 代表者:代表取締役社長 更家悠介
  • 従業員数:2,283名(連結、2024年2月現在)
  • 事業内容:

    家庭用及び業務用洗浄剤・消毒剤・うがい薬等の衛生用品と薬液供給機器等の開発・製造・販売

    食品衛生・環境衛生のコンサルティング

  • 海外拠点:ウガンダ、ケニア、アメリカ、カナダ、アジア、欧州など29カ国以上に展開

【参考URL】
https://www.saraya.com/com_profile/gaiyo/kigyo.html
https://www.saraya.com/com_profile/gaiyo/
https://shachomeikan.jp/corporations/21890
https://doda.jp/DodaFront/View/Company/j_id__00004927460/


2.サラヤ株式会社のアフリカにおけるマネタイズ事業

サラヤ株式会社はアフリカで、以下の事業を現地で採算が取れるビジネスとして展開しています。

  • アルコール手指消毒剤の現地生産・販売
    2011年にウガンダで現地法人を設立し、現地産サトウキビ廃糖蜜を原料にしたアルコール手指消毒剤(Alsoft Vなど)を自社工場で製造。病院や医療機関、一般市場向けに販売し、現地で安定した売上を確保しています。WHOや国際NGO、商社からの需要もあり、量産体制が続いています。
  • 「病院で手の消毒100%プロジェクト」による医療機関向け販売
    ウガンダの病院向けにアルコール手指消毒剤を販売し、院内感染対策や医療従事者向けの衛生教育も実施。JICAのBOPビジネス連携促進協力準備調査を活用し、現地の医療現場に消毒剤を普及させる事業を展開しています。
  • 一般市場・小売市場への消毒剤・石けんの販売
    病院や医療機関だけでなく、現地のスーパーマーケットや一般家庭向けにも消毒液や石けんを販売。現地で「サラヤ=消毒液」としてブランドが定着し、消費者市場でも売上を伸ばしています。

【参考URL】
https://toyokeizai.net/articles/-/310492?display=b
https://www.saraya.com/news/2020y/entry-262.html
https://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/4295/
https://www.ecoplaza.gr.jp/sdgs_t_company/06_saraya/


3.アフリカ進出の背景と現地の社会課題・ビジネス機会

アフリカでは、5歳未満児の死亡率が高く、その多くが下痢性疾患や肺炎など、手洗いなどの衛生習慣で予防可能な感染症によるものです。ウガンダをはじめとするサハラ以南アフリカ諸国では、衛生インフラや衛生教育が十分に普及していませんでした。

サラヤがアフリカに本格進出したのは2011年、ウガンダに現地法人「SARAYA EAST AFRICA」を設立したことがきっかけです。直接の契機となったのは、2009年から日本ユニセフ協会と連携して参加した「世界手洗いの日プロジェクト(Global Handwashing Day Project)」です。このプロジェクトは、石けんによる正しい手洗いの重要性を日本や世界の子どもたちに広め、下痢や肺炎など予防可能な感染症による5歳未満児の死亡を減らすことを目的としています。

サラヤはこの活動を通じてウガンダを訪問し、現地の衛生環境の厳しさ――手洗いの習慣がほとんどなく、医療機関ですら十分な衛生教育や資材が行き届いていない現状――を目の当たりにしました。特にウガンダでは、5歳未満児の死亡率が1,000人あたり128人と非常に高く、下痢性疾患や呼吸器感染症など、手洗いで予防できる病気が多いことが分かりました。

この現地視察の経験については、サラヤ株式会社の北條健生氏(当時の海外事業部担当)がdodaのインタビューで、「もともとはビジネスではなく純粋な寄付のみの支援でしたが、社長が現地を視察してみると、手の消毒はもちろん手洗いの習慣すらない。戦後間もない日本と同じ状況だった。使命感がわき起こった」と語っています。また、サラヤの職員も「アフリカのさまざまな施設を視察する中で、現地の人々だけでなく医療機関すらも衛生教育が不十分であることに気がついた」と述べています。

サラヤの強みは、創業以来の「衛生で社会課題を解決する」という理念、日本で培った手洗い・消毒の普及ノウハウ、そして現地資源(サトウキビ廃糖蜜)を活用した現地生産体制の構築力にあります。情勢が安定し英語も通じるウガンダを拠点に選び、2010年には「100万人の手洗いプロジェクト」を立ち上げ、ユニセフやJICA、現地政府と連携しながら、手洗い啓発や衛生教育、医療現場での消毒剤普及、現地生産による雇用創出を進めてきました。

CSR活動とBOP(Base of the Pyramid)ビジネスを組み合わせ、単なる製品販売ではなく、現地社会の課題解決と持続可能なビジネスモデルの両立を目指す「ソーシャルアクションカンパニー」としての挑戦が、サラヤのアフリカ事業の大きな特徴です。

【参考URL】
https://www.unicef.org/wash/handwashing
https://doda.jp/guide/kyoukan/006_a.html
https://sdgs-scrum.jp/actions/2376/
https://handwashing.jp/eng00.html
https://sports-for-social.com/special/saraya-100project/
https://www.saraya.com/com_profile/jigyo/kaigai.html


4.サラヤ株式会社のアフリカ事業と、公的機関等との連携推進

ユニセフとの連携による「100万人の手洗いプロジェクト」

サラヤは2010年より、公益財団法人日本ユニセフ協会と連携し、「100万人の手洗いプロジェクト」を実施しています。このプロジェクトでは、サラヤの衛生製品の売上の一部がユニセフに寄付され、アフリカ東部ウガンダにおける手洗い普及活動を支援しています。ユニセフはウガンダ政府や地域の教育機関と協力し、学校やコミュニティでの手洗い啓発を全国規模で展開。サラヤは製品供給とともに、衛生教育の普及に貢献しています。

この取り組みは、ウガンダの子どもたちの健康増進に寄与し、5歳未満児の死亡率低減にもつながっています。また、コロナ禍や自然災害による学校閉鎖など困難な状況下でも、衛生設備の提供やメディアキャンペーンを通じて衛生行動の促進を継続しています。

JICAとの協働「病院で手の消毒100%プロジェクト」

サラヤは、独立行政法人国際協力機構(JICA)の支援を受け、ウガンダの医療機関を対象に「病院で手の消毒100%プロジェクト」を展開しています。これは医療現場での院内感染防止を目的とし、アルコール手指消毒剤の現地生産と普及、医療従事者への感染管理教育を組み合わせた包括的な支援です。

プロジェクト開始後、医療従事者の消毒遵守率が大幅に向上し、帝王切開後の敗血症や乳児の下痢性疾患の院内発生減少など具体的な成果が報告されています。JICAのBOPビジネス連携促進制度を活用し、持続可能なビジネスモデルとして現地に根付かせています。

ケニアにおける抗菌薬適正使用体制支援(2025年~)

2025年5月、サラヤは国立大学法人長崎大学、塩野義製薬株式会社、株式会社Connect Afyaと包括的連携協定を締結し、ケニアの医療機関における抗菌薬適正使用体制の支援に乗り出しました。これは世界的な公衆衛生上の脅威である薬剤耐性(AMR)対策の一環で、感染症領域の学術研究、感染制御、検査支援など多面的な取り組みを推進します。

協定に基づき、ケニア政府や医療機関、国際機関(GARDP、CHAI)との連携を強化し、感染制御・抗菌薬適正使用教育を通じて将来的なAMR対策指導者の育成を目指しています。サラヤは感染対策商品や教育ツールの提供を担い、現地の感染症対策体制強化に貢献しています。

その他の公的機関・NGOとの連携

  • サラヤは現地政府やNGOとも協働し、地域の衛生環境改善や健康教育、感染症予防活動を推進しています。
  • 国際機関や現地自治体と連携し、衛生製品の普及や啓発活動を持続的に展開することで、地域住民の衛生意識向上に寄与しています。

サラヤ株式会社のアフリカ事業の企画・運営は、サラヤ本社の海外事業本部(アフリカ開発室・BOPビジネス推進室)が中心となり、現地法人スタッフと連携して進められています。ユニセフやJICA、長崎大学、塩野義製薬などの公的機関や研究機関との強固な連携を基盤に、衛生製品の現地生産・普及、感染症対策教育、抗菌薬適正使用支援など多面的な取り組みを展開しています。これらの協働により、現地の公衆衛生向上と持続可能なビジネスモデルの確立を両立し、アフリカの健康課題解決に貢献しています。

【参考URL】
https://www.saraya.com/news/2025y/1176.html
https://www.unicef.or.jp/cooperate/company/ex/saraya/
https://www.jica.go.jp/priv_partner/case/release/bop_uga01.html
https://www.saraya.com/news/2012y/733.html


5.アフリカ事業の今後の展望

サラヤ株式会社は、アフリカ事業の今後の展望として「衛生」「環境」「健康」を軸に、現地社会の公衆衛生・医療体制の高度化と持続可能なビジネス拡大を目指しています。プレスリリースや公式発表から、今後の具体的な方向性と強化ポイントを詳しく考察します。

感染対策・医療体制強化への本格参入

サラヤは2014年からウガンダでアルコール手指消毒薬の現地製造・販売を開始し、院内感染対策や医療従事者の教育に注力してきました。今後はウガンダのみならず、ケニア、南スーダン、コンゴ民主共和国など東アフリカ諸国への供給・展開をさらに強化。JICAや現地保健省との協業により、医療現場での感染管理人材育成や現地医療機関の衛生レベル底上げを進めていきます。

特に2024年7月にはケニア・ナイロビに東アフリカ有数の大規模総合ラボを開設。健康診断から次世代シークエンシングまでワンストップで対応できる体制を構築し、ISO 15189/KENAS認定の品質管理のもとで国内外の医療・研究機関と連携。検査データに基づく治療最適化や感染症対策、公衆衛生向上に貢献する方針です。

抗菌薬適正使用(AMR)対策の推進

2025年5月には長崎大学・塩野義製薬・Connect Afyaと包括的連携協定を締結し、ケニアの医療機関における抗菌薬適正使用(AMR対策)体制の支援を開始しました。感染制御・検査支援・教育・研究など多面的な連携を通じ、現地のAMR対策指導者育成や感染症領域の人材強化を目指します。今後はケニア保健省や国際機関とも連携し、アフリカ全域でのAMR対策モデルの構築・展開を視野に入れています。

社会課題解決型ビジネスの深化と拡大

サラヤは「100万人の手洗いプロジェクト」など社会貢献活動を継続しつつ、現地生産・現地雇用・製品販売を組み合わせたソーシャルビジネスを拡大しています。今後もユニセフ、JICA、現地政府、NGO等との連携を強化し、衛生教育・啓発から医療機関向け製品販売、一般家庭向けの市場拡大まで、収益性と社会的インパクトの両立を図る方針です。

新規分野・地域への展開

ケニアでは医療衛生分野に加え、食品衛生や生活習慣病対策、子どもの健全育成(例:キベラスラムのサッカーリーグ支援)など新たな事業分野にも参入。さらに南スーダンやコンゴ民主共和国など、衛生インフラが脆弱な国々への参入も進めており、現地パートナーや国際機関との協働体制を強化しています。

持続可能な成長とSDGs経営

サラヤは「衛生」「環境」「健康」を掲げ、SDGs目標3(すべての人に健康と福祉を)や目標6(安全な水と衛生)などの達成に貢献する企業を目指しています。今後も現地社会の自立支援や雇用創出、女性や子どもへの健康教育、AMR対策など多面的な社会課題解決型ビジネスを深化させ、アフリカの持続可能な発展に寄与していく方針です。

サラヤ株式会社は、現地生産・医療体制強化・社会貢献・新規分野開拓を一体化した「現地密着型グローバルヘルス企業」として、アフリカの公衆衛生・医療課題解決と持続的成長の両立を本格化させています。今後も官民・国際連携を活かし、アフリカ全域でのインパクト拡大が期待されます。

【参考URL】
https://www.saraya.com/news/2025y/1176.html
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000089.000056238.html
https://www.saraya.com/sdgs/hygiene/
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/hakusyo/13_hakusho/column/column03.html
https://www.saraya.com/news/2024y/1101.html
https://www.link-j.org/bulletinboard/article-44897.html


6.まとめ

サラヤ株式会社は、ウガンダを中心に消毒剤の現地生産・販売、医療機関向けの感染対策支援、一般市場への製品普及、衛生教育活動などを通じて、アフリカの公衆衛生向上と持続可能なビジネスの両立を実現してきました。ユニセフやJICA、現地政府・NGO・大学・製薬企業など多様なパートナーと連携し、「100万人の手洗いプロジェクト」や抗菌薬適正使用体制支援など多面的な取り組みを展開。現地住民の衛生意識向上や感染症リスク低減、5歳未満児の死亡率低下など、具体的な社会的インパクトを生み出しています。

アフリカ進出を目指す邦人企業がサラヤの事例から学べるポイントは多岐にわたります。

  • 社会課題起点のビジネスモデル:単なる製品販売ではなく、「現地の課題解決」を出発点に事業を設計し、社会貢献と収益性を両立させている点は、SDGs時代の新興国ビジネスの模範です。
  • 現地生産・現地調達・雇用創出:現地資源(サトウキビ廃糖蜜等)を活用した生産体制や、現地スタッフの雇用・育成を重視し、社会的信頼と持続可能性を高めています。
  • 公的機関・国際機関・NGOとの連携:ユニセフ、JICA、現地政府、NGO等と連携し、単独では難しい社会浸透や制度化を実現。官民連携の重要性を示しています。
  • 現地社会の自立・自走を見据えた仕組み:寄付や支援に頼り切らず、現地でビジネスとして自立できる体制を構築し、プロジェクトの持続性と拡大を実現しています。
  • “現地目線”での柔軟な事業展開:文化や商習慣の違いを尊重し、現地の声を反映した製品・サービス開発や啓発活動を徹底。現地ブランドとしての信頼を築いています。
  • 失敗を恐れず挑戦し続ける姿勢:「必要なことなら、他社がやらなくても自分たちがやる」という開拓精神と、成果が出るまでやり続ける粘り強さも大きな学びです。

今後もサラヤは、ケニアや南スーダン、コンゴ民主共和国など東アフリカ全域への事業拡大、AMR(薬剤耐性)対策や新規分野への参入、SDGs達成に向けた現地密着型ビジネスモデルの深化を目指しています。アフリカ進出を志す邦人企業にとって、サラヤの“現地とともに創る”姿勢と戦略は、持続可能なグローバル事業展開の貴重な指針となるでしょう。

【参考】
https://www.saraya.com/news/2020y/entry-262.html
https://idcj.jp/sdgs/img/SDGs_Company_Example_04.pdf
https://www.saraya.com/news/2018y/entry-358.html
https://sports-for-social.com/special/saraya-100project/
https://sdgsjapan.com/saraya
https://doda.jp/guide/kyoukan/006_a.html
https://sports-for-social.com/special/saraya-eisei202202/
https://anza-africa.com/blog/879
https://sdgs-scrum.jp/actions/2376/


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Author
原健太
テーマ日本企業のアフリカ進出
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