
アフリカのヘルスケア分野に挑むNECの戦略は、社会課題を出発点とし、国際機関や現地との連携を軸に展開されています。本稿ではその取り組みを時系列で整理し、ユニセフとの協働を中心に実態を分析。さらに中小企業が進出する際の参考ポイントも抽出し、現地適応型の事業開発や段階的アプローチの重要性、官民連携の可能性について考察します。
まずは、以下にNEC(日本電気株式会社)の企業概要と引用元のURLを示します。
社名:日本電気株式会社(NEC Corporation)設立:1899年(明治32年)
本社所在地:東京都港区芝五丁目7番1号
代表者:代表取締役 執行役員社長 兼 CEO 森田 隆之
従業員数:約11万人(2023年3月末時点)
事業内容:NECは「Orchestrating a brighter world」を企業メッセージに掲げ、社会価値創造型企業として、以下のような分野でソリューションを提供しています。
NECは特に、AIや生体認証、5Gなどの先進技術を活用し、安全・安心・公平・効率な社会の実現を目指しています。近年では、サステナビリティへの対応や、国連のSDGsへの貢献も経営戦略の柱に据えています。
引用元URL:

NEC(日本電気株式会社)は1960年代からアフリカ市場に進出しており、通信インフラの整備や治安・セキュリティ分野の技術提供を中心に事業を展開してきました。特に2011年には、南アフリカ共和国に「NECアフリカ社(NEC Africa)」を設立し、サブサハラ・アフリカ地域を中心とする拠点体制を強化しました。
主な事業分野:
ヘルスケア分野へのシフト:
近年、NECはアフリカにおける事業展開の中で、ヘルスケア領域にも力を入れ始めています。特に、母子保健・ワクチン接種の管理・栄養状態の可視化といった領域で、生体認証やクラウド技術、モバイル端末を活用した*「命を守るICT」*を推進中です。
これらのヘルスケア事業は、ユニセフや長崎大学、ケニア医療研究所、地元政府などとの連携によって進められており、従来の「インフラ提供」から「社会課題解決型ソリューション提供」へとNECの役割は広がっています。
引用元URL:
NECがアフリカに注目し、事業を本格展開する背景には、成長市場としてのポテンシャルと、社会課題の解決を通じた社会価値創造の実現という2つの大きな理由があります。特に近年は、通信インフラやセキュリティ分野に加え、ヘルスケア領域への注力が際立ってきています。

① 急成長が見込まれる市場性
アフリカは現在、世界でも有数の若年人口比率が高い地域であり、今後も継続的な人口増加と都市化が進むと予測されています。国際連合の報告では、2050年までに世界の人口増加の半分以上がアフリカで起こるとされており、
消費・通信・医療・教育などの生活インフラ分野においても急速な需要の高まりが見込まれています。
このような背景のもと、NECはアフリカを将来的に最も成長が期待される戦略市場の一つと位置づけています。
② 深刻な社会課題と技術介入の必要性(特にヘルスケア)
成長の裏側で、アフリカではいまだに多くの社会課題が存在します。特に医療分野では以下のような深刻な課題が継続しています:
NECはこれらの課題を、*「ICTと生体認証技術で解決できる」*と考え、現地機関や国際パートナーとの連携のもと、医療分野へのデジタル技術導入に取り組む決断を下しました。
③ NECの技術とヘルスケア課題の親和性
NECが保有する以下の技術は、アフリカの医療課題と極めて高い親和性を持っています:
これらの技術は、単なる製品提供にとどまらず、*“命を守る社会インフラ”*として機能することが期待されています。
④ 国際・学術機関との連携による実装力
NECはアフリカでの事業を単独で行うのではなく、*ユニセフ、長崎大学、JICA、ケニア医療研究所(KEMRI)*など、信頼ある国際・学術機関と密接に連携し、現地に根ざした形で実装可能な技術導入を進めています。
たとえば、長崎大学との「グローバルヘルス生体認証学講座」では、実際にケニアの保健所で母親の指紋・顔写真を取得し、保健医療情報の正確な管理と継続的ケアを実現しています。
結論:社会課題解決型ビジネスとしてのアフリカ展開
NECのアフリカ進出は、単なる新市場開拓ではなく、“社会課題の現場でICTを活用する”というミッション型事業でもあります。
特にヘルスケア分野は、人の命に直接関わる領域であり、NECが掲げる「安全・安心・公平・効率な社会の実現」に直結する戦略分野です。
引用元URL:
〜ユニセフ等国際機関との協働の強化〜
NECは1960年代よりアフリカに進出し、主に通信インフラやセキュリティ事業を展開してきました。しかし、近年では社会課題解決型の事業へと重点をシフトし、とりわけヘルスケア分野での取り組みを強化しています。NECは、出生登録の不備や医療アクセスの不均衡といった現地の課題に対し、自社の生体認証やICT技術を活用して貢献することを目的に、複数の国際機関と協働したプロジェクトを開始しました。
NECのアフリカにおけるヘルスケアプロジェクトは、母子保健・ワクチン接種管理・栄養改善といった領域に集中しています。ここでは、特に重要なパートナーであるユニセフ、Gavi、Simprintsとの協働プロジェクトを中心に紹介します。

■ GaviとSimprintsとの連携(2019年〜)
NECは2019年より、Gavi(ワクチン・アライアンス)および英国の非営利団体Simprintsと共同で、子ども向け指紋認証ソリューションの開発・実装を開始しました。
この連携では、バングラデシュとタンザニアで計約20,000人の1〜5歳の子どもたちを対象に、指紋認証を用いたワクチン接種履歴の管理システムが導入されました。
さらに2021年には、ガーナにおいてマラリアワクチンの4回接種を追跡管理するプロジェクトが展開され、初回登録:5,499人/生体認証による後続接種追跡:2,536人という成果が報告されています。
🔗 Gavi・Simprints・NECの協働
🔗 Simprintsによる実績報告(ガーナ事例)
■ ケニア医療研究所(KEMRI)との連携(2023年)
2023年には、NECは*ケニア医療研究所(KEMRI)*と共同で、新生児の指紋認証と保護者の声紋認証を用いたワクチン接種管理システムの実証運用を開始しました。この取り組みは、出生登録のない子どもにも確実な医療サービスを提供することを目的としており、現場では医療従事者による操作性や認証精度の検証が行われました。
🔗 NECプレスリリース:KEMRIとの協働(2023年2月)
■ ユニセフおよびアフリカCDCとの連携(2024年〜)
2024年2月には、アフリカ疾病予防管理センター(Africa CDC)とユニセフが、一次医療体制・供給網・緊急時対応などを包括的に強化するためのパートナーシップ拡大を発表しました。NECはこの文脈において、技術支援の形で参画し、サプライチェーンの最適化や医療情報管理基盤の構築に寄与しています。
NECが国際機関との連携を深める理由は以下の通りです:
NECの生体認証技術は、単なる個人識別にとどまらず、「命に届く医療サービス」を支える基盤技術として国際的にも高く評価されています。
これまでの取り組みにより、以下のような影響が現地で実現・期待されています:
取組内容 | 国・地域 | 対象者数・成果 |
子ども向け指紋認証ワクチン管理(Gavi連携) | バングラデシュ・タンザニア | 約20,000人(1〜5歳)対象 |
マラリアワクチン追跡(Simprints連携) | ガーナ | 初回登録:5,499人/追跡完了:2,536人 |
新生児指紋+音声認証システム | ケニア | 実証運用中(KEMRI) |
こうした結果は、ワクチン接種率の向上、乳児死亡率の低下、行政による医療資源の適正配分など、幅広い公衆衛生面での成果につながることが期待されています。

NECにとって、アフリカのヘルスケア市場は、将来的に以下のような収益源となる可能性があります。
なお、現時点ではこれらの取り組みの多くが実証事業・パイロットプロジェクトの段階にあり、商用スケールでの本格的な収益化は今後の展開に依存しています。ただし、2023年以降のケニア・ガーナでの実績は、今後の拡大・定着の足がかりとなる可能性があります。
✅ 収益モデルの特徴:単発的な納品ではなく、導入・運用・保守・拡張までを含む*「継続性のあるB2G型サービスモデル」*であるため、安定的な中長期収益を見込める構造です。
NECのアフリカでの取り組みは、日本政府が推進する外交・開発戦略とも高い親和性があります。
まとめ:現時点と今後の期待値
項目 | 内容 |
現状 | 実証実験・パイロット事業中心(直接的な収益は限定的) |
中期的見通し | B2G/B2I(政府・国際機関向け)モデルによるサービス収益化 |
長期的戦略的価値 | グローバルな社会課題解決型企業としてのブランド確立・ESG対応強化 |
引用・参考URL:

NECのアフリカにおけるヘルスケア事業は、単なる技術導入ではなく、「社会課題の解決」を軸に据えた共創型の取り組みです。中小企業がアフリカ市場に挑戦する際にも、この姿勢から多くの示唆が得られます。
特に参考になるのは、現地のニーズを起点に事業を設計している点です。出生登録の未整備やワクチン接種記録の管理不足といった課題に対し、生体認証やICTを応用して解決を図るアプローチは、資源の限られた中小企業にとっても応用可能です。
また、ユニセフやGavi、現地の医療研究機関などと連携しながら小規模な実証(PoC)から着実にステップアップしている点も重要です。中小企業にとっても、いきなりの商用展開ではなく、小さな成功を積み重ねる戦略が有効です。
さらに、NECが注力しているB2GやB2Iモデルも、中小企業にとって現実的な市場選択肢です。アフリカでは、国や国際機関が主要な買い手となることが多く、資金調達もそのスキームを活用することで実現性が高まります。
加えて、現地の文化や環境に合わせた柔軟な製品・サービス設計(ローカライゼーション)も鍵となります。NECは現地の実情に合わせた技術調整を行いながら、パートナーとともに改善を重ねています。こうした「共に創る」姿勢は、どの規模の企業にも求められる要素です。
中小企業がアフリカ事業に挑むには、NECのような大手の成功事例を自社のスケールに合う形で咀嚼し、段階的・戦略的に取り組むことが重要です。そしてその際には、アフリカ市場に精通した専門のコンサルティング会社と連携することで、現地理解や制度対応、パートナー探索などを強力に支援してもらうことができます。
NECは、アフリカにおいて従来の通信・セキュリティ分野に加え、近年はヘルスケア領域への技術展開を加速しています。特に、ユニセフやGavi、Simprints、ケニア医療研究所(KEMRI)との協働を通じて、生体認証技術やICTを活用したワクチン接種管理や母子保健の強化に貢献してきました。
現時点では多くの取り組みが実証事業・パイロット段階にありますが、今後は各国政府や国際機関との連携を通じて、商用スケールでの本格導入と収益化が見込まれています。また、これらの実績は、NECのブランド力向上、他地域展開、ESG評価の向上にも寄与しています。
今後は、電子母子手帳や遠隔診療などのスマートヘルスインフラ構築へと展開が進むとともに、医療分野で得た信頼と技術を土台に、教育・行政・防災など他分野への展開も期待されます。さらに、日本政府のODA戦略や国際開発協力と連携することで、NECはグローバルな社会課題解決型企業としての立場を一層強固にしていくと考えられます。
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