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現場に寄り添うICTで医療格差に挑む――アルムの現地密着力とアフリカ進出成功の秘訣

2025.05.15Media

現場に寄り添うICTで医療格差に挑む――アルムの現地密着力とアフリカ進出成功の秘訣

現場に寄り添うICTで医療格差に挑む――アルムの現地密着力とアフリカ進出成功の秘訣

医療ICTの力で世界の医療格差解消に挑む株式会社アルムは、アフリカにおいてもその先進的な技術とノウハウを活かし、現地の医療課題に正面から取り組んでいます。ケニアを拠点とした現地法人「Allm AFYA Solutions Ltd.」を設立し、医療従事者間コミュニケーションアプリ「Join」などのICTソリューションを展開。感染症対策や医療アクセスの向上、医療教育の推進など多角的なアプローチで、アフリカの医療現場に変革をもたらしています。この記事では、アルムのアフリカ事業の全貌、その社会的インパクト、そして今後の展望について徹底的に掘り下げます。

1 会社概要

株式会社アルム(Allm Inc.)は、2001年4月に設立された日本の医療ICT企業です。本社は東京都渋谷区にあり、代表取締役社長は大谷駿明氏、資本金は1億円です。

もともとデジタルコンテンツ配信事業からスタートしたアルムは、2014年より本格的に医療ICT分野へ参入しました。医療現場の課題をITで解決することを目指し、医療従事者がスマートフォンやパソコンを使って患者情報や検査画像を安全かつ迅速に共有できる仕組みを開発しています。

主力サービスである医療従事者向けコミュニケーションアプリ「Join(ジョイン)」は2014年にリリースされ、2016年には日本で初めて保険診療の適用が認められたプログラム医療機器となりました。2022年1月時点で世界30カ国・1,000医療機関以上、2023年には32カ国で導入されています。日本国内でも約500の医療機関で利用されています。

アルムは日本国内にとどまらず、アメリカ、ドイツ、アラブ首長国連邦、ブラジル、チリ、台湾、マレーシア、ケニアなど9カ国に現地拠点を設け、グローバルに事業を展開しています。各国の政府や現地医療機関と連携し、医療ネットワークの構築や医療教育の推進、医療資源の不足や偏在の解消に取り組んでいる点が大きな特徴です。たとえば、ブラジルでは遠隔診療ネットワークの構築、アフリカ・ケニアでは現地法人設立を通じて、現地の医療現場に即したソリューションを提供しています。

「すべての医療を支える会社(All Medical)」を理念に掲げ、ICTの力で医療の格差やミスマッチをなくし、誰もが公平に医療を受けられる社会の実現を目指しています。今後も世界各国で蓄積した医療ネットワークやノウハウを活かし、AIやモバイル医療機器との連携による遠隔医療の高度化、越境医療支援、医療教育のさらなる推進など、グローバルに医療DXをリードする存在として成長が期待されています。

【参考URL】
https://www.allm.net/company/overview/
https://www.allm.net/join/
https://www.allm.net/news/20220201/
https://www.allm.net/news/20200916/
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000116.000044577.html
https://www.allm.net/news/20210402/

2 アフリカでの事業の概要

アルムはアフリカにおける医療ICT事業の拡大を目的に、2021年ケニア・ナイロビに現地法人「Allm AFYA Solutions Ltd.」を設立しました。アフリカ大陸55カ国のうち33カ国が低所得国であり、専門的な医療サービスへのアクセスが困難な現状を踏まえ、医療関係者間コミュニケーションアプリ「Join」などのICTソリューションを展開しています。感染症流行や経済的事情で患者の移動が難しい場合でも、遠隔で専門医療の受診が可能となる仕組みを構築しています。また、看護師などのコミュニティヘルスワーカー(CHW)がJoinを活用し、遠方の医師と連携して地域医療を支えるモデルを推進しています。さらに、がん領域の医療教育機関との連携や、日本政府(JICA、経済産業省)との協働事業も展開し、医療ネットワークの構築と診断率向上、医薬品・医療機器の普及促進も視野に入れています。

【参考URL】https://www.allm.net/news/20211012/

3 アフリカ進出の理由、経緯

アルムがアフリカ進出を決断した背景には、国際的な医療課題の深刻さがあります。株式会社アルムの2021年10月12日付プレスリリースによると、世界の低・中所得国では毎年約900万人が死亡しており、そのうち60%は質の低い保健サービスが原因、40%は保健サービスへのアクセスの悪さが原因で命を落としているとされています(出典:Lancet Global Health Commission on High-Quality Health Systems 1 year on: progress on a global imperative)。アフリカでは特に医療資源の不足と偏在が深刻で、専門的な医療サービスを受けることが難しく、質の高い医療サービスの提供が重要な課題となっています。

ケニアを拠点に選んだ理由についても、同プレスリリースでは「デジタルヘルスソリューションの導入が急速に進んでいること、市場規模や国の安定性、さまざまなステークホルダーからの関心の高さ」などが挙げられています。また、アルムの経営陣は「現地の医療格差解消のためにICTソリューションを展開し、医療現場に変革をもたらすべく現地法人設立に至った」と説明しています。

さらに、アルムは日本政府の支援を受けてアフリカでの事業を推進しています。具体的には、独立行政法人国際協力機構(JICA)の「中小企業・SDGsビジネス支援事業~普及・実証・ビジネス化事業(中小企業支援型)~」(2019年度第二回)に「ルワンダ国急性期疾患の救命率を向上させる遠隔診断医療ネットワークシステムの普及・実証・ビジネス化事業」が採択され、2021年12月から2024年6月までルワンダにおける遠隔医療サポート実証事業を実施しています。この事業は、ルワンダの中核病院と日本の専門医をICTでつなぎ、遠隔地でも専門医のサポートを受けられるネットワークを構築するものです。

また、経済産業省が推進する「IT導入補助金2021」の支援事業者としても採択されており、アルムが開発・提供する医療関係者間コミュニケーションアプリ「Join」が補助対象ITツールとして認定されています。これにより、医療機関が「Join」導入にかかる費用の一部について補助を受けることが可能になっています。

このように、アルムは日本政府や関連機関の支援を活用しながら、アフリカでの医療ICT事業を積極的に展開しています。

【参考URL】
https://www.allm.net/news/20211012/
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000041.000044577.html
https://www.allm.net/news/20220406/
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000054.000044577.html
https://www.allm.net/news/20210810/

4 アフリカでの事業の詳細

アフリカ大陸では、人口増加や医療インフラの未整備、医療従事者の不足、都市部と農村部の格差、感染症や非感染性疾患の増加など、さまざまな医療課題が深刻化しています。特にケニアをはじめとする国々では、専門的な医療サービスへのアクセスが難しく、地域のコミュニティヘルスワーカー(CHW)が一次医療の要となっています。

こうした状況に対し、アルムはケニア・ナイロビに現地法人「Allm AFYA Solutions Ltd.」を設立し、医療従事者向けコミュニケーションアプリ「Join」を中核としたICTソリューションを展開しています。Joinは、高セキュリティ環境下で医療画像や患者情報を共有できるアプリで、遠隔地にいる専門医とのコンサルテーションや救急患者の転院時の情報共有など、多様な用途で活用されています。

ケニアでの具体的な活用例

  • コミュニティヘルスワーカー(CHW)による活用
     CHWが患者宅を訪問し、スマートフォンやタブレットでJoinを利用します。患者の症状や画像をその場で記録し、遠隔地の医師にチャットや画像送信で相談します。これにより、専門医の診断やアドバイスをリアルタイムで受けることができ、地域全体の医療レベル向上に寄与しています。
  • 患者・医師・専門医をつなぐ遠隔医療連携
     患者・地域のかかりつけ医・遠方の専門医をJoinでつなぎ、遠隔での専門医療受診を実現します。患者は地元の医療機関にいながら、都市部や国外の専門医の診断や治療方針を受けることが可能です。
  • 子宮頸がん検診プロジェクト
     ケニア西部の大規模病院MTRH/AMPATHと連携し、HIV陽性女性を対象とした子宮頸がん検診プロジェクトを実施しています。デジタルcervicography(子宮頸部画像診断)をJoinで共有し、専門医による遠隔診断を可能にしました。2022年時点で2,000人以上の女性が検査を受け、前がん病変の早期発見率が従来比1.5倍に向上しています【AMPATH報告書】。
  • 医療教育・ネットワーク構築の包括的サポート
     アルムは遠隔診断ネットワークの構築だけでなく、現地医療従事者への教育やネットワーク運用のトレーニングも包括的に支援しています。ケニアのInternational Cancer Institute(ICI)と提携し、がん専門医教育や症例共有をJoinを通じて実施するほか、現地でのICT活用トレーニングやワークショップも積極的に展開しています。

Joinサービスの流れ(ケニアでの活用例)

  1. CHWが患者宅を訪問
     スマートフォンやタブレットでJoinアプリを起動し、患者情報や症状、写真・動画を入力します。
  2. 遠隔地の医師と連携
     Join上のチャットや画像送信機能で、都市部や専門医にリアルタイムで相談。必要に応じてビデオ通話も可能です。
  3. 専門医の診断・指示
     専門医は送信された情報をもとに診断・アドバイスを返信。治療方針や追加検査の指示もJoin上で共有します。
  4. 現地での対応・フォロー
     CHWや地域医師は専門医の指示に従い、患者への対応や必要な医療機関への転送を実施します。
  5. 教育・症例共有
     症例データや診断プロセスはJoin上で蓄積・共有され、医療従事者の学びやネットワーク強化にも活用されています。

Joinの利用料・マネタイズ

Joinは、株式会社アルムが開発・提供する医療機関向けの有料サービスです。日本国内では、標準プランで月額80,000円(税抜)から/施設、または1ユーザーあたり月額900円(税抜)という料金設定が一般的です。初期導入時にはゲートウェイ(GW)やVPN等の構築費用が別途必要となり、また経済産業省の「IT導入補助金」などの補助制度も利用できます。

一方、ケニアを含む海外での料金体系については、現地の医療機関や政府、国際機関との連携、現地の経済状況や医療体制などを踏まえ、柔軟な料金体系や持続可能なビジネスモデルが設定されていると考えられます。具体的な金額や契約内容については、導入規模や用途、現地パートナーとの協議によって個別に決定される場合が多いようです。

【参考URL】
https://www.allm.net/news/20211012/
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000041.000044577.html
https://www2.jica.go.jp/ja/priv_sme_partner/document/1280/Fc192011_summary.pdf
https://www.allm.net/news/20220406/
https://www.allm.net/join/
https://www.docomo.ne.jp/info/news_release/2014/07/15_00.html
https://xtech.nikkei.com/dm/article/EVENT/20140715/365442/
https://japan.cnet.com/article/35050910/
https://www.allm.net/news/20220203/
https://kyokuhp.ncgm.go.jp/activity/open/R5webPDF/16_R5_Olympus_kenya.pdf
https://www.asahikawa-med.ac.jp/newstopics/single/post_495.html
https://www.allm.net/news/20231010/
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000054.000044577.html

ルワンダ、ガーナでの遠隔診断ネットワーク構築

  • ルワンダ(JICA支援事業)

     ルワンダでは、JICA「中小企業・SDGsビジネス支援事業(中小企業支援型)」の採択を受け、2021年12月から2024年6月まで、キング・ファイサル病院などの中核病院と地方医療機関をJoinで接続する実証事業が進められています。このプロジェクトでは、脳卒中や心筋梗塞などの急性期疾患に対し、日本の専門医が遠隔で診断支援を行い、現地医療従事者へのオンライン教育や、AIによる診断補助の基盤構築も進められています。ルワンダは医療資源が限られ、循環器専門医が全国で7名しかいないなど都市と地方の医療格差が深刻ですが、Joinを活用したネットワークにより、専門医の知見を地方にも届けることが可能となっています。

  • ガーナ(経済産業省補助事業)

     ガーナでは、経済産業省「飛びだせJapan!」などの補助事業を活用し、アクラの7医療機関にJoinを導入し、母子保健分野を中心とした遠隔診断ネットワークの実証が進行中です。CHW(コミュニティヘルスワーカー)が携帯型超音波装置で取得した妊婦の画像を専門医と共有することで、高リスク妊娠の早期発見や適切な医療介入につなげています。また、Network of Practice(NoP)プログラムにより、地域医療機関同士の連携や患者紹介も円滑化されています。

これらの取り組みは、いずれも現時点では実証段階であり、現地の医療資源やデジタル環境、社会状況の調査、ビジネスモデルの検証を進めながら、将来的な本格展開を見据えています。

今後の展望

両国とも、実証事業を通じて都市部と地方、一次医療機関と専門医療機関の連携強化、医療従事者の教育・育成、医療データの利活用など、多角的な医療DXの基盤が整いつつあります。今後は、実証成果をもとにアフリカ全土へのモデル展開や、AI診断支援、医療機器・医薬品流通のデジタル連携、現地ニーズに即した持続可能なビジネスモデルの構築など、さらなる発展が期待されています。

【参考URL】
https://www.allm.net/news/20220406/
https://www.allm.net/news/20231010/
https://www2.jica.go.jp/ja/priv_sme_partner/document/1280/Fc192011_summary.pdf
https://www.asahikawa-med.ac.jp/newstopics/single/post_495.html
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000054.000044577.html
https://www.meti.go.jp/policy/trade_policy/africa_kyoten/jirei/allm.html
https://afri-quest.com/archives/24065
https://afri-quest.com/archives/26298

5 アフリカでの事業の業績、現地に与えた影響

アルムのアフリカ事業は、医療アクセスの改善や医療教育の推進を通じて、現地医療の質向上に大きく寄与しています。特にケニアでは、がんの診断・治療・教育を専門とする医療機関であるInternational Cancer Institute(ICI、ケニア拠点)と連携し、がん診療や医療従事者教育の分野で成果を上げています。

Joinの導入により、遠隔地でも専門医の診断が受けられるようになり、救急医療やがん診療の現場で、医療従事者同士がリアルタイムに情報共有・相談できる体制が整いました。これにより、医療現場の意思決定の迅速化や、地域間の医療格差の縮小に貢献しています。

International Cancer Instituteとの連携では、13地区の医療機関でがん専門医教育を提供し、医療従事者のスキルアップに貢献しています。JICAや経済産業省の実証事業では、ルワンダやガーナでの遠隔診断ネットワーク構築が進み、地域医療の充実や医療機器・医薬品の普及促進にもつながっています。こうした取り組みは、現地の患者や医療従事者からも高く評価されており、今後さらに多くの国・地域への展開が期待されています。

【参考URL】
https://www.allm.net/news/20211012/
https://www.intercancer.com/
https://research-nexus.net/institution/9000785606/
https://www.esmo.org/for-patients/esmo-designated-centres-of-integrated-oncology-palliative-care/esmo-accredited-designated-centres/international-cancer-institute-care-and-research-centre-ici-crc
https://ke.linkedin.com/company/international-cancer-institute

6 まとめ

アルムの強みは、医療ICT分野における高い技術力と実績、そして現地ニーズに即した柔軟な事業展開にあります。Joinは日本初の保険収載プログラム医療機器として高い信頼性を持ち、世界32カ国以上で導入実績を誇っています。アフリカでは、現地の医療従事者や教育機関、政府機関と連携し、単なる技術提供にとどまらず、医療教育やネットワーク構築まで包括的にサポートしている点が大きな特徴です。さらに、日本政府や国際機関との協働による資金調達・事業推進力も大きな強みです。現地の課題に寄り添い、持続可能な医療システム構築を目指す姿勢が、他社との差別化ポイントとなっています。

今後の展望としては、ケニアをはじめとするアフリカ各国でのネットワークをさらに拡大し、より多くの医療機関や医療従事者へのJoin導入を進めることが期待されます。また、AIやIoTなどの先端技術を活用した診断支援や、医薬品・医療機器メーカーとの連携による新たなビジネスモデルの構築も視野に入れています。さらに、現地で蓄積した医療データを活用し、疾病予防や公衆衛生分野への応用、医療教育のデジタル化推進など、アフリカの医療課題解決に向けた多角的な取り組みを強化していく方針です。

アルムの挑戦は、アフリカの医療現場に新たな希望をもたらし、持続可能な社会の実現に向けて今後も進化し続けていくと考えられます。

【参考URL】
https://www.allm.net/news/20211012/
https://www.allm.net/join/
https://www.allm.net/news/20220201/
https://www.allm.net/news/20200916/
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000116.000044577.html
https://www.allm.net/news/20210402/

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公式サイト:https://www.aa-healthdynamics.com/

Author
原健太
テーマ日本企業のアフリカ進出ヘルステック・スタートアップアフリカの医療課題
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