
アフリカ大陸では慢性腎疾患(CKD)患者の増加と医療インフラの未整備が深刻な課題となっています。日機装株式会社は、日本の透析医療機器分野を牽引する企業として、現地の水質や電力事情、医療従事者の教育レベルといったアフリカ特有の課題に対応した血液透析装置の導入、現地パートナーとの教育・保守体制の構築、そして持続可能な医療インフラの確立に取り組んでいます。本稿では、日機装のアフリカ事業の概要、進出経緯、各国での具体的な取り組みや実績、公的機関との連携、今後の展望までを詳しく解説します。
日機装株式会社(NIKKISO CO., LTD.)は1953年創業の日本の総合エンジニアリング企業であり、医療機器(特に血液透析装置)、産業用ポンプ、航空宇宙部品などを主力事業としています。医療機器分野では、1969年に国産初の人工腎臓装置を開発して以来、国内シェア50%超、世界80カ国以上に製品を展開するなど、グローバルな存在感を誇ります[1][4]。技術革新力、現地適応力、教育・サポート体制の強さが特徴で、日本国内外の医療現場で高い信頼を得ています。

日機装は、アフリカにおける慢性腎疾患(CKD)患者の増加や医療インフラの未整備といった現地課題に対応し、血液透析装置をはじめとする医療機器の「開発・製造・販売・導入・保守・教育支援」までを一貫して担う事業を展開しています[2][4][10]。
同社の医療機器事業は、1969年に国産初の人工透析装置を開発して以来、患者や医療現場の声を反映しながら、装置本体や消耗品の改良、現地ニーズに応じたカスタマイズ、現地医療従事者への操作研修やメンテナンス教育まで、透析医療の現場を総合的に支えることが特徴です。
具体的には、
アフリカ市場における日本企業の進出は、近年ますます活発化しています。特にケニアは、都市化や消費の成熟、新技術の受容性の高さから「アフリカのゲートウェイ」と呼ばれ、日系企業が東アフリカ全体の拠点として進出するケースが増えています[6]。実際、過去5年で27社が新たにケニアに進出しており、医療やヘルスケア分野でも現地の社会課題解決型ビジネスを志向する動きが顕著です。こうした背景には、ケニアが周辺国(タンザニア、ウガンダ、ルワンダ等)の経済の中心であり、域内連携や官民協力のハブとしての役割を果たしていることが挙げられます。
日機装株式会社も、こうしたアフリカ市場の成長性と社会的ニーズに着目し、段階的に現地展開を進めてきました。まずは欧州・中東への進出を経て、アフリカでも現地パートナーとの連携や製品カスタマイズ、教育・保守体制の構築を強化。とりわけケニアを起点とした東アフリカ地域での活動が本格化しています[7][8]。

2021年12月7日、在ケニア日本大使館とケニア保健省の間で、ヘルスケアおよびウェルネス分野における二国間協力覚書(MOC)が締結されました[9]。このMOCは、日本政府(内閣官房健康・医療戦略室および厚生労働省)とケニア保健省が、アフリカ健康・ウェルビーイニシアティブ(AfHWIN)の枠組みのもと、両国のヘルスケア分野での協力を深化させることを目的としています。
この協力は2019年からの協議を経て実現し、両国の官民連携を強化しながら、医療サービスの質向上やユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の実現、「BIG 4」アジェンダ(ケニア政府の成長戦略)達成に寄与することを目指しています[9]。MOCの署名式は第2回日アフリカ官民経済フォーラムでも紹介され、両国のヘルスケア分野での連携強化の象徴とされました。
このイニシアティブの下で、ビジネスベースの医療サービス拡充や、経済成長と医療サービス向上の好循環を生み出す仕組みづくり、具体的な官民協働のアプローチが検討・実施されています。日本政府は今後も二国間・多国間でケニアの公衆衛生システムやサービス向上に協力していく方針を表明しています[9]。
2024年10月17日には、ナイロビのWeston Hotelで「1 Day Japanese Hospital Event in Kenya 2024(1日日本病院)」が開催されました[5]。このイベントは、アフリカ健康構想(AfHWIN)の一環として、日本政府とケニア保健省が共催し、ケニアの医療関係者や政策立案者に対して日本の医療機器・サービスを紹介することを目的としています。
本イベントには日機装株式会社を含む日本の医療・ヘルスケア関連企業13社が出展し、非感染性疾患(NCDs)分野を中心に、診断・治療・予後管理までをカバーする多様な製品やサービスのデモンストレーションが行われました。会場にはケニア保健省の幹部やナショナルアセンブリの保健委員会委員長、日本大使館関係者などが出席し、官民連携によるイノベーションや医療機器の現地導入、人材育成、ファイナンス支援、国際機関との協働強化などが議論されました[5]。
この展示会を通じて、日機装をはじめとする日本企業は現地医療従事者や政策決定者とのネットワークを拡大し、現地ニーズの把握や新規ビジネス機会の創出、現地パートナーとの協働体制の強化に繋げています[5]。

日機装は、アフリカを含むEMEA地域(欧州・中東・アフリカ)での透析治療現場に合わせ、現地の水質や電力事情、医療従事者の人手不足、医療制度の違いなどに対応した現地適応型の透析装置を開発・導入しています。
たとえば、欧州やアフリカの多くの国では「個別供給方式(Personalized method)」が主流であり、患者ごとに最適化されたダイアライザ液の調合や濃度管理が求められます。日機装は日本で培った「中央供給方式」と「個別供給方式」の両方に対応した技術を持ち、現地医療現場の要望に応じて柔軟に装置をカスタマイズしています【1】。
特に2015年以降、海外市場向けに投入された「DBB-EXA」シリーズは、D-FAS(Dialysis-Full Assist System)という自動化機能を搭載。消耗品のセットから治療準備、洗浄、終了後の血液回収までをワンボタンで自動化でき、医療従事者の作業負担を大幅に軽減しています。この自動化技術は、現地の人材不足や作業効率化のニーズに合致し、欧州・アフリカで高く評価されています【1】。
現地の多様な医療現場に対応するため、血圧モニター、透析量モニター、血液量モニターなどの多機能オプションを装備。これにより、患者ごとの状態変化にきめ細かく対応でき、医療の質と安全性を高めています。
また、AIや予測アルゴリズムを活用し、治療中の血圧低下リスクの事前検知や、患者データをもとにした最適な治療条件の提案など、QOL向上と合併症予防にも取り組んでいます【5】。
現地の医療従事者に対しては、装置導入時の初期トレーニングだけでなく、年1回の定期研修や現地パートナー企業・看護師・技士を対象とした「認定制度」を導入。日機装の装置は、所定の研修と認定を受けたスタッフのみが操作できる仕組みを徹底し、現場の安全性と知識アップデートを支えています【1】。
さらに、現地パートナーやディストリビューター向けにも技術研修を実施し、現地でのメンテナンスやトラブル対応力の底上げを図っています。
現地の医療現場では、装置の安定稼働と迅速なトラブル対応が極めて重要です。日機装はEMEA地域に現地法人・サービス拠点を設置し、専任の技術者による定期点検や緊急対応を実施。IoTを活用した遠隔監視や予知保全機能も導入し、装置のダウンタイム最小化・サービス品質向上に努めています【1】。
プラスチック廃棄物やエネルギー消費の削減、消耗品の現地調達・現地生産化など、持続可能な透析医療の実現にも注力。AIやデータ活用による省エネ運転や、患者・医療従事者の負担軽減を通じて、アフリカを含む新興国市場でのSDGs達成にも貢献しています【5】。
2024年以降、EMEA地域での製造・サービス体制強化や現地パートナーとの連携拡大を発表。現地の医療従事者向けイベントや展示会にも積極参加し、製品デモや教育プログラムの普及に努めています。
また、現地での消耗品供給やアフターサービス体制の現地化、現地法人によるサポート拡充など、同社のプレスリリースでも現地密着型の取り組みが強調されています【1】【3】【4】。
参考:1 https://bright.nikkiso.co.jp/en/article_en/medical_en/europe-hemodialysis
3 https://www.nikkiso.com
4 https://www.nikkisoceig.com/press_release/nikkiso-clean-energy-and-industrial-gases-group-announces-it-will-double-manufacturing-capacity-in-europe/
5 https://bright.nikkiso.co.jp/en/article_en/medical_en/dialysis-treatment-sdgs-2

日機装は、アフリカでの医療機器普及や現地医療体制強化にあたり、JICA(国際協力機構)や日本政府のアフリカ健康構想など公的機関と積極的に連携しています[9]。
JICAはアフリカの医療・保健分野で現地企業や日本企業の活動を支援しており、官民連携による医療機器の導入・普及、現地人材育成、制度設計支援など幅広い取り組みを展開しています。たとえば、JICAが進める「アフリカ健康構想」や「1日日本病院」展示会では、現地企業や日本企業の技術・ノウハウを活用した医療インフラ強化や人材育成が推進されています[5][9]。
日機装もこうした枠組みの中で、現地パートナーや医療機関と協働し、装置導入時の研修や保守体制の現地化、さらには現地ガイドライン策定支援など、社会課題解決型ビジネスを展開しています。JICAの民間連携事業や技術協力プロジェクトを通じて、現地での実証事業やパイロット導入、制度形成支援なども実施し、現地社会・行政・医療機関と一体となった持続的な医療体制構築に貢献しています。
アフリカのヘルスケア市場は今後も人口増加と中間層の拡大を背景に、年率3~4%の成長が見込まれています。特に医療機器分野は2028年にかけて堅調な拡大が予測され、ケニア、エジプト、ナイジェリア、ガーナなどが有望市場とされています[6]。
日機装は今後、以下のような戦略で事業拡大を図ると考えられます。
日本国内市場の縮小を背景に、アフリカを含む新興国市場での成長を重視する日機装にとって、アフリカは今後も中長期的な重点投資領域となるでしょう。
日機装株式会社は、ケニア、南アフリカ、エジプトなどアフリカ各国で、現地ニーズに適応した血液透析装置の導入、教育・保守体制の構築、現地パートナーやJICA等公的機関との協働を通じて、医療アクセスの向上と持続可能な医療インフラの確立に貢献しています。現地適応型装置の開発や多段階教育体制、IoTを活用した保守サービス、官民連携による制度形成支援など、ヘルスケアビジネスの観点からも先進的な取り組みが特徴です。
アフリカ進出を目指す、あるいは関心のある邦人企業にとって、日機装の事例は多くの示唆を与えます。
こうした実践は、アフリカ市場での長期的な事業成功や社会的インパクト創出を目指す邦人企業にとって、非常に参考となるでしょう。メディカル事業全体の収益も堅調に推移しており、アフリカ事業は今後の成長投資領域として、さらなる拡大が期待されています。
この記事に関するお問い合わせ、またはアフリカでの医療事業展開・機器導入・人材育成に関するご相談は、AA Health Dynamics株式会社までお気軽にご連絡ください。
お問い合わせフォームはこちら
1: https://www.nikkiso.com
2: https://nikkisomedical.com/contact/
3:https://www.gasworld.com/story/nikkiso-expands-facility-in-south-africa-to-meet-growing-energy-needs/
4: https://nikkisomedical.com
5: https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kenkouiryou/torikumi/pdf/20250109_flyer.pdf
6:https://bright.nikkiso.co.jp/en/article_en/medical_en/europe-hemodialysis
7:https://www.nikkisoceig.com/press_release/nikkiso-clean-energy-and-industrial-gases-group-announces-it-will-double-manufacturing-capacity-in-europe/
8:https://www.lewa.com/en/lewa-group/news-detail/nikkiso-announces-agreement-to-acquire-the-business-of-cryogenic-industries-inc
9: https://www.nikkiso.co.jp/ir/files/FY2011_70th_annual.pdf
10: https://www.nikkiso.co.jp/recruit/new/business/industrial/index.html: https://www.nikkiso.co.jp/ir/library/financial.html: https://openjicareport.jica.go.jp/928/928_122.html: https://www.jetro.go.jp/ext_images/biz/seminar/2023/89b492fa1c54682d/0119.pdf
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